研究課題/領域番号 |
18K11967
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デザイン態度 / デザイン思考 / ワークショップ / コ・デザイン / 情報教育 / 情報デザイン / 協働デザイン |
研究実績の概要 |
2021年度は、当初に掲げた5つの研究計画の中の、3)教育者に対する「デザイン態度」に関する視点の提案について、5)の普及活動の機会を組み合わせながら、さらなる言語化に取り組んだ。 ■活動1:単著『コ・デザイン―デザインすることをみんなの手に』(NTT出版/2020年12月)に収録された、第6章の「デザイン態度」に関する議論をもとに、一般視聴者向けのオンライン講演(3/30 Schoo, 12/25 TamaDesign University)ほか、大学や学会等で講演を行った。また分担執筆した『グラフィックデザイン・ブックガイド』(グラフィック社/2022年3月)内で「デザイン態度」について言及した。 ■活動2:PodCastによるインタビューシリーズ「態度リサーチ」の運営をおこなった。デザインとは直接関係しない分野の人の話を深めていくことで、聞く人が共通する輪郭を見つけ、態度的な観点を浮かび上がらせる試みである。前年度の6本に加えて、新しくミュージックファシリテーター、サッカー研究者、情報教諭、お笑い芸人との対談を収録し、5本を公開した。特に第9回の都立高校の情報教諭との対談は本研究が貢献できる対象となる人からの研究成果への講評ともなり、有意義なものとなった。 ■活動3:2018年度から行ってきた活動をもとに、「教育者向けデザイン学習プログラム」についての検討を行った。長引く感染症の影響で対面でのワークショップは開催できなかったが、人類学者たちとの議論によって人類学教育もデザインと同様に「態度」や「ケア」の問題に帰結することを知り、共通する問題を具体化した概念モデルを発想することができた。 ■活動4:態度に着目したデザインの一例として、他者との信頼関係を構築するためのカードゲーム「甘えん坊ど」の開発をおこなった。これらのアウトプットをもとに、情報1の教育現場と接続させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度、2021年度は長引く感染症の影響で、当初対面で計画したことが全面的に中止になり、当初予定していた研究計画を大幅に変更することになった。また大学のオンライン授業の対応や授業内容の再検討のため、研究活動を優先することはできず、年度初めに構想していた新しいオンラインワークショップは実施できなかった。 しかしながら、感染症の影響で思いがけない効果も生まれたと考えられる。自宅時間が増えたことで、想像以上に出版した書籍が読まれることになった。またそれらの反響として多くの講演へとつながった。また伝達の場がオンラインに移行したことによって、スキマ時間に聞けるPodcastや、動画プラットフォームではデジタルの利点を活かした、対面では得られない数の再生回数があった。 以上をまとめると、2021年度は、いくつかのアウトプットは出せたものの、年度初めに計画したようにはいかなったため、総合的に判断して「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は5カ年の研究計画の最終年度である。ここまで取り組んできた、「1)デザイン態度の形成プロセスに関する調査」と「 2)教育者の学習コンテクスト調査」、「3)教育者に対する『デザイン態度』に関する視点の提案」を統合しながら4)の「教育者向けデザイン学習プログラムの開発」にむけてアウトプットの検討を行う。令和4年度は以下の3点を実施する。 ■計画1)PodCast「態度リサーチ」の続編制作を行う。深部でつながる態度の観点を知ることをコンセプトとして、一見デザインとは遠いところにいる人にインタビューを行う。3名程度の収録を予定している。 ■計画2)8月に、千葉県にて「情報1」の情報デザイン領域に関する高校の情報教諭向けの研修会を開催予定である。この機会を利用して現職の教員の方々に本研究の知見を還元する。 ■計画3)これまでの知見をまとめた高校教員向けの資料を制作する。オンラインで研究者と議論し、教育者が持つべきデザイン態度の育成に関する要点についての考察を行い、提言を行う。資料はオンラインで閲覧できるデジタルコンテンツを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたオンラインワークショップや国内出張ができなかったため、次年度の研究資料購入と成果物を複製するための予算に充当する予定である。
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