研究課題/領域番号 |
18K11968
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
井澤 尚子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (90595133)
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研究分担者 |
山内 泰樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (60550994)
片山 一郎 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (70369916)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 白色度 / ウォーターカラーイリュージョン / 水彩効果 / 白色向上 / 色覚 / 服飾デザイン |
研究実績の概要 |
令和2年度は、令和元年度の曲線変調時のウォーターカラーイリュージョン効果の変化量を測定する実験結果を踏まえ、水彩効果の強さを再検証することを目的に、hue cancellation法を用いた刺激呈示システムでの実験を実施し、その結果に検討を加え実験プログラムの再構築を行った。 国際学会での発表を予定していたが、全世界的な新型コロナ感染拡大の影響で学会の開催が中止になったため、学会での発表は断念した。 実験は前年同様に外光を遮断した実験ブース内で、液晶ディスプレイを用いて行った。実験刺激はこれまでの実験結果から同化現象が強く起きた色の組み合わせ、黄(内側の色)―青(外側の色)(YB)、赤―緑(RG)、緑―赤(GR)を作成した。使用した刺激は波の数を変化させる周波数変調と、波の振幅を変化させる振幅変調の2つのパラメータを用い、各パラメータにつき、5段階の変調刺激を作成した。被験者は、刺激画像をディスプレイに呈示し、水彩効果によって色みがついて見える輪郭線内部の領域を無彩色になるようマウスを操作して調節した。各被験者に対し、周波数、振幅変調それぞれの変調条件で5枚の刺激画像を5回ランダムに呈示し、計75試行を行った。 今回の実験では、白色点と被験者自身が無彩色と感じる色差(色度の距離)が振幅や周波数によって影響を受けるのではないかということを検討した。そのため実験結果は各被験者個人のデータ解析を中心に行った。解析の結果、周波数変調条件、振幅変調条件ともに、被験者の無彩色と知覚された色度は、内側拡散色の補色の方向を選択する傾向にはあったが、呈示された色とは無関係に青方向へのシフトが見られる被験者もあった。 今回の実験を踏まえ、実験結果の精度を高め最終実験に繋げていくために、実験プログラムの再構築を行い、最終実験と並行して、再構築されたプログラムでの実験も引き続き行うことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度は、ウォーターカラーイリュージョン効果の強さを定量的に検証することを目的に、hue cancellation法を用いて、曲線変調時の水彩効果の変化量の測定実験を行った結果、周波数変調条件、振幅変調条件とも、無彩色と知覚される色度が内側拡散色の補色の方向選択をする傾向が見られた。周波数変調条件、振幅変調条件とも、カラーパターンによって、それぞれの変調条件から受ける影響力は異なると考えられる。水彩効果の効果量は、周波数変調のほうが強く影響する等の知見を得た。 令和2年度の実験では、白色点と被験者自身が無彩色と感じる色度との色差が振幅や周波数によって影響を受けるのではないかということを検討した。そのため実験結果は各被験者個人のデータ解析を中心に行った。解析の結果、周波数変調条件、振幅変調条件ともに、被験者の無彩色と知覚された色度は、内側拡散色の補色の方向を選択する傾向にはあったが、呈示された色とは無関係に青方向へのシフトが見られる被験者もあった。 実験結果については、令和2年度も国際学会での発表を予定していたが、全世界的な新型コロナ感染拡大の影響で学会の開催が中止になったため、学会での発表は断念した。また、コロナ禍での本務先での業務量の増加から、当初の計画までを完遂することはできなかった。 令和2年度の実験は、水彩効果を定量的に示すための重要な実験であり、これまでの実験結果の精度を高めるために、実験結果を踏まえ実験プログラムの再構築を行った。再構築されたプログラムを使用する実験は、令和3年度も引き続き実施する予定である。今回の実験結果は、水彩効果の強さを再検証し、服飾デザインを含む最終実験に繋げるためにも重要な工程となった。
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今後の研究の推進方策 |
再構築されたプログラムを使用し水彩効果を定量的に示すための実験を引き続き行う一方、ウォーターカラーイリュージョン効果を用いた白色知覚データを収集するため、刺激呈示装置システムを使った心理物理実験を新たに立案し実施する。 これまでの実験から、ウォーターカラーイリュージョン効果により白色度を上げる色の組み合わせを明らかにした。さらに、ディスプレイを用いた刺激実験でも、白色効果実験が可能であることが示唆された。令和2年度の実験では、曲線変調時の水彩効果の変化量を定量的に検証し、実験結果から刺激呈示システムを用いた心理物理実験プログラムの再構築を行った。令和3年度は、再構築を行った実験プログラムでの実験を引き続き行うとともに、白色知覚が向上する色の組み合わせによる「知覚的な色のにじみの定量化」実験を行う予定である。これまでの実験結果から、図柄内側への知覚的白色効果が強く確認されたウォーターカラーイリュージョン図柄と配色を用いて、被験者に、内側―外側を構成する配色で、内側へのにじみを抑える刺激を段階的に呈示する実験を考えている。外側色の内側へのにじみを抑えることは、外側色の外側へのにじみを助長することになり、そのことにより内側の白色知覚を強く感じることに繋がると考えられる。さらに、白色知覚には内側の色自身の内側への水彩効果によるにじみも影響すると考える。この実験でウォーターカラーイリュージョン効果による知覚的白色効果向上の定量的データの取得を目指す。このことから、知覚的白色向上に影響を与える色の組み合わせの白色効果の定量化が可能になると考える。 また、服飾デザインへの応用として、白布による評価実験も手掛ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、ウォーターカラーイリュージョン効果を定量的に示す実験の再実証のための実験を行い、その結果を踏まえ刺激呈示システムを用いた心理物理実験プログラムの再構築を行った。この実験は、前回同様に外光を遮断した実験ブース内で液晶ディスプレイを用いて行った実験装置であることから、実験にかかる費用を抑える結果となった。また、新型コロナ感染拡大の影響により年度当初に計画していた研究打合せに伴う出張が削減されたことや、発表を予定していた国際学会が、世界的な新型コロナ感染拡大の影響により開催中止になった。それにより年度当初に計上していた旅費が未使用となった。 最終年度である令和3年度の使用計画であるが、再構築されたプログラムを用い、水彩効果を定量的に示す実験の継続実験を行うとともに、並行して当初目的である服飾への水彩効果の応用を図る。次年度は被験者の数を本年度以上確保し、効果の検証を実施する予定である。さらにウォーターカラーイリュージョンを用いた白色度の向上を定量的に示す実験に着手するため、実験に使用する機器、刺激試料の購入を考えている。令和3年度は最終年度にあたるため、本研究から得られる知見をまとめるために、本年度以上に共同研究者間の密なる打ち合わせが必要であり、そのための旅費、加えて国内外の学会での成果発表のための諸費用、実験プログラムの作成、実験被験者への謝金等での使用を計画している。
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