研究課題/領域番号 |
18K11970
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
竹田 周平 福井工業大学, 工学部, 教授 (60511954)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療防災 / 在宅医療 / デザイン開発 / システムデザイン / 臨床工学技士 / 減災 |
研究実績の概要 |
本研究は,これまでに行われていない「工学と医・看護学との学際分野」に着目し,治療が高度化し拡大する在宅医療の防災性向上をこれまでにない速度で実現するものである.研究は,着目した学祭分野における新たな課題を在宅医療の現場より集めて分析し,より現実的で実用可能な医療防災プロダクトのデザインを開発,この成果を在宅医療の加え病院や診療所,そして訪問看護ステーションへ還元する.この研究で特筆すべきことは,被災を経験した医師やケアマネジャーとのインタビュー調査に加え,徹底したアンケート調査等の分析を充実させて課題を明確化,さらにはこれまで把握されていない在宅医療現場における日常の医療活動に支障を及ぼさないための条件を明らかにする.そして,防災プロダクトデザインを開発,第三者が参画した審査会を通じて研究の客観性を担保しながら,これらの試験運用を経て防災プロダクトを開発,震災後でも在宅医療の機能保持を加速させることに全力で取り組む.2018年度は,被災体験を有するケアマネジャーや臨床工学技士を中心に,インタビュー調査を実施する.対象エリアは,高齢者人口千人当たりの訪問看護利用実人数(厚生労働省報告)が比較的多い兵庫県と大阪府,また比較的低い熊本県と高知県および福井県を対象とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は,2016年4月に発生した熊本地震の被災地である熊本県(熊本市及び南阿蘇),また兵庫県・大阪府・京都府において,臨床工学技士や医療従事者,また熊本では地元のフォトグラファーを中心にインタビュー調査を実施した.特に,熊本県においては,熊本地震で被災した病院の中で病棟が傾斜するなどの被害が発生しつつも,災害後の医療活動を継続した特定の病院を対象に,被災した病棟の確認(現在は使用されていない病棟で関係者以外は見学できない),また当時の状況,課題などに関する有益な情報を得ることができた.これに加え,南阿蘇では,現在立ち入り禁止となっているエリアに存在する病院の画像を記録したフォトグラファーと面談することができ,震災直後の貴重な損傷状況の画像を入手することができた.これは,研究の質を高めるために大変有益な資料であり,今後の調査及び開発に対して有益な情報となった.また,関西地区では,医療従事者を集めたネットワークミーティングを開催し,臨床工学技士やデバイス開発者,福祉関係に従事する看護士を始め,多くの方々から研究テーマに関する意見を収集することができた.以上から,2018年度はインタビュー調査を中心に研究を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度で明らかになった課題や原因を解決するために,医療機器の防災対策(機器の機能保持)に対する最適なデザイン開発へ展開する.また,前年度でできなかったエリアの調査も併せて実施する.ここでは,在宅医療で患者数が増大する可能性がある「人工呼吸器」を取り上げ「酸素療法」も含めた重要医療機器に対する防災装置(既存装置に支障を与えず,震災時にでも移動・転倒を防ぎ,地震後でも直ちに治療が可能となる防災プロダクトデザイン)を開発し,実際の現場で試験運用と改善を繰り返す.
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象が若干残ったため,次年度使用額が変更となった.なお2019年度では,不足エリアの調査を行う予定である.
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