研究課題/領域番号 |
18K11971
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
杉浦 明弘 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 講師 (00528630)
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研究分担者 |
高田 宗樹 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40398855)
田中 邦彦 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 教授 (60313871)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 映像酔い / 意識統制 / 視覚運動性眼振 / 視覚誘導性姿勢変化 |
研究実績の概要 |
本研究は,意識のあり方が映像酔いに与える影響の調査と,それを基にした映像酔い防止方法の提案を目的としている.本年度は,体動に関わる自己意識統制を利用した感覚矛盾の原因特定の検証を行った.検証実験の概要については,被験者11名に対して映像酔いを誘発するような映像(黒い背景に多数の球が複数配置されているような空間を基本とし,空間が左右方向に0.25 Hzで正弦往復運動するもの)を3分間連続視聴させた.視聴方法については,立位姿勢にて42インチの3D対応テレビを用いて50cmの視距離とした.映像視聴中の自己意識の統制については,各実験前に,(1)無統制,(2)映像の動きと同方向に身体を動揺させる(同方向),(3)映像の動きと逆方向に動揺させる(逆方向),(4)意識的に体を静止する,の4種類の意識統制をそれぞれ行った.測定項目については,臨場感および映像酔いに関するアンケート調査,重心動揺,眼球運動とした. 臨場感に関するアンケート結果では,意識統制(1)から(3)は同程度であり,(4)は低値を示した.一方,映像酔いに関するアンケート結果については,意識統制(1),(2),(4)は同程度であり,(3)はそれらと比較して高値を示した.また,意識統制(2)の結果は,四分位範囲が最も大きくなった.眼球運動の結果については,視覚運動性眼振(OKN)の発生頻度において特異的な結果を示した(意識統制:(3)>(1)=(4)>(2)).またOKNの発生頻度と動揺病感受性との間に有意な負の相関が示され,動揺病を発症しやすい人ほど,OKNが起こりにくいという傾向が示唆された.これらの結果を国内および国際関連学会で成果発表を行った(一部は発表予定).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は,実験データの取得とその基本的な解析まで取り組むことはできたが,測定結果に対して,映像酔いに関わる生理的な解釈については十分に行えていないことが挙げられる.特に,動揺病感受性の差により姿勢変化は正の相関を示し,視覚運動性眼振は負の相関が示されたことについては,映像酔い感覚矛盾の根本的原因の特定に寄与できると考えている.次年度の実験準備等は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は,身体制御の方法を自己意識統制から前庭電気刺激(GVS)に切り替え同様の検証を実施する予定である.その際,眼球運動測定は眼電図にて記録していたが,GVSにより眼電図による計測は不可能となる見込みである.そのため,視線計測装置を利用して眼球運動の計測を試みる.また前年度実験のデータの生理的解釈を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の論文執筆までにはいたらず,論文掲載費用と英文校正費用が次年度へ繰越となったため.次年度の使用計画については,現時点で必要な物品購入は終了しており,引き続き行う検証実験の消耗品,謝金,研究打ち合わせ,成果発表に関わる費用として使用する予定である.
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