本研究は、歩行者が安全安心かつスムーズに利用できる駅周辺広場を実現するために、空間設計手法を提示することを目的として研究を行った。 大阪駅「アトリウム広場」を例として、異なる時期、異なる被験者で視線測定装置を用いて調査を行い、歩行者の注視頻度や注視対象物に与える空間要素や停留・滞留者が歩行者に与える影響を検討した。 平均注視頻度および平均歩行速度については、調査日間で有意な差は見られなかった。このことから、平均利用者密度が被験者の平均注視頻度および平均歩行速度に与える影響は小さいことが分かった。注視対象物を、〈人〉〈水平要素〉〈垂直要素〉〈上下移動〉〈建物要素〉〈設備要素〉〈遠方建物〉の7つに分類した。全体的に被験者が最も頻繁に注視した対象は、〈人〉、〈水平要素〉であった。〈人〉は「前方を歩く人」が最も多く、次に「前方から来る人」、「前方を横切る人」、「人の合間」と続く。〈水平要素〉は、「床」がが最も多く、次に「点字ブロック・グレーチング」が多く、いずれも下面に位置する空間要素である。各注視対象物に対する注視回数を調査日間で比較した結果、いずれも1%水準で有意な相関が見られた。 以上のことから、調査日、被験者によらず、空間構成要素によって注視対象物と注視頻度が決まることが明らかとなった。また、空間の利用者密度や被験者によらず、床や空間利用者が注視対象物となる頻度が高かった。今回得られた結果は、駅周辺広場の空間設計に普遍的な知見を与えるものである。
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