本研究は、高明度、低彩度に偏り色彩的類似性が高い日本の処方薬が服薬時の光源によって、さらに識別性が低下され服薬ミスを引き起こす危険性に着眼し、特に視覚機能が低下する高齢者にとって、混同される色彩と光源との組み合わせを発見することで、安全な服薬環境を提言することを目的としている。 本年度は、白群および曖昧な色群寒色系、曖昧な色群暖色系を中心に光源の違いによる色の変化を測色し、これまでの薄い黄・黄赤・ピンク、青、緑、紫の結果とも総合的に検証した。 その結果、例えば、複数の白の錠剤は色温度の低い電球色や白熱電球、日の出・日没の光(以下HZ)下では、種類の識別が難しくなる。また、白と他の色では、昼光色下の黄赤の錠剤は低照度下の白と、低照度下の黄赤は白熱電球下の白と、電球色下および白熱電球下の黄赤はHZ下の白と混同する可能性ある。さらに、電球色下の青の錠剤は低照度(70 lx)下の白と混同される危険性が示された。曖昧な暖色群は、どの異なる光源下であっても白と混同しやすい。 異なる色間では、温白色下の黄赤は電球色下の黄と、白熱電球の黄赤、電球色下の黄赤は白熱電球下の黄と混同しやすい。低照度、温白色下の青はD65下の黄に、電球色下の青は昼光色下の黄赤に近づくなど、青みを減じる光源下で薄い青を見ると、薄い黄や黄赤と誤って識別される可能性が示唆された。さらに電球色下の緑と温白色、低照度下の黄、日の出・日没のHZ下の緑と低照度下の黄など、薄い緑と薄い黄は光源の種類によって誤認される可能性がある。 一方で、白とピンク、白と黄、白と緑、白と紫は異なる光源下で見ても誤認される可能性が低いことが示唆された。 患者の多くは、照明と薬の色変化について意識することは少ない。本研究で得られた成果を用いて、服薬時の光源環境についても服薬指導することで、服薬ミスの低減とアドヒアランスの向上に寄与できるものと思われる。
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