クローン病は下痢・腹痛などを繰り返しながら慢性的な経過をとる原因不明の炎症性腸疾患である.クローン病は原因不明で再発・再燃を繰り返し,治療は内科治療と外科治療があり社会生活上の制限もあり得る.さらに特定医療費受給申請などもあって,クローン病に関して患者が考慮すべき事柄は,他の疾患に比べてかなり複雑である.そのため患者にとって必要なクローン病の複雑多岐にわたる医療情報の把握は容易とは言い難い.患者にとって必要なクローン病に関する医療情報は医師をはじめとした医療従事者から直接受け取るものの,メディアやWebの影響力を鑑みると,これを補うために患者自身がメディアやWebなどから直接取り込むことも多いと考えられる.そこで我々は,クローン病がどのように報道あるいは流布されているかの検証が必要と考えた. 本研究ではメディアとして新聞を取り上げ,クローン病に関する記事を検索し,その報道内容を検討した.研究対象を全国3大紙である読売新聞,朝日新聞,毎日新聞の3紙とし,各々の新聞記事データベースを用いて記事の検索を行った.検索期間は2010年1月1日から2019年12月31日の10年間,キーワードは“クローン病”として検索し,検索結果として得られた記事を資料として用い,計量テキスト分析を行った. その結果,語としては「患者」「クローン病」「難病」の3語が著しく多く使われていた.このうち「難病」はクローン病の特徴を端的に説明する語として的確に選択されていたと考えられた.また「難病」という語の頻用は,非医療関係者における本疾患に対するイメージを表していると思われた.他には外科治療や免疫抑制治療についての情報提供や説明会や講演会などの患者支援に関する情報も少なからず認められた.しかし同じ炎症性疾患に属する潰瘍性大腸炎との相違であるクローン病に特有の肛門病変を話題とした記事は少なかった.
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