国立大学の附属図書館は、長年、図書館職員を採用する際に独自の採用試験を課すことによって、司書資格の有無にかかわらず、学術情報の流通に携わる有為な人材を選考・採用してきた。本研究の目的は、日本の国家公務員制度と国立大学の図書館職員制度を踏まえた上で、国立大学における図書館職員の採用試験の歴史、採用試験の概要をまとめ、国家公務員採用Ⅱ種試験「図書館学」と国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」の試験問題を分析し、大学図書館職員の採用・選考過程や採用時点で求められる専門的知識について分析・考察することである。 令和3年度は、日本の国立大学の図書館職員採用試験の実態を解明するために、前年度に引き続いて、人事院の人事行政に関する基礎文献、および、国立大学法人が作成した採用試験問題を収集した。近年の国立大学法人等職員統一採用試験では、筆記試験に加えて、面接試験の比重が高まっている。 そこで、国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」に関する基礎研究の一環として、第二次試験の面接試験を対象として、国立大学法人の面接調査票を網羅的に収集し、採用面接時に国立大学法人の図書館職員に問われる適性・能力について分析・考察した。面接調査票では把握できない事柄については、大学図書館の管理職経験者のインタビュー調査を行なった。その結果、(1)国家公務員採用Ⅱ種試験「図書館学」の実施時期よりも面接試験の比重が高まっていること、(2)コンピテンシー評価に対応した質問事項が増加していること、(3)自己紹介・自己PRの新しい表現形式(自由記述(自由表現)の分量の増加)が導入されてきていること、が明らかになった。 令和3年度の研究成果の一部は、「国立大学法人等職員統一採用試験「事務系(図書)」の第二次試験(面接試験)」という題目で、西日本図書館学会で学会発表を行なった。
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