研究課題/領域番号 |
18K12010
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
田中 優子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30701495)
|
研究分担者 |
犬塚 美輪 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50572880)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 批判 / デマ / 視線 / アイトラッカー / ソーシャルメディア / 批判的思考 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,視線計測に基づき、批判情報の呈示が意思決定に及ぼす効果における個人差および個人内変化の認知的メカニズムを明らかにすることである。デマに関する先行研究では,批判情報の提示はデマに対する信念を緩和させる効果が示されてきた。しかし,その効果は限定的で,批判情報提示後も依然としてデマへのポジティブな信念を維持する反応も一定数みられた。これは,(a)批判情報を呈示していても被験者の一部がそれを見ていないために効果が限定されていた可能性と,(b)批判情報を見ていても効果が限定されるという可能性が考えられる。どちらの可能性が支持されるかによって,批判情報の提示効果の理解およびデマ拡散問題に対する適切な介入方法は異なってくる。 初年度である平成30年度は,複数のデマ情報とそれに対応する批判情報の組み合わせをソーシャルメディアのtweetメッセージに類似した形式でディスプレイに表示し,それぞれに対する視線の停留場所,移動頻度,停留時間をアイトラッカー(Tobii Proナノ)を用いて定量化した。同時に,各情報に対する心理的反応(正しさ,重要性などの主観的判断)を測定し,デマ情報の信頼性判断に及ぼす批判情報の呈示効果と視覚的注意の関連性について分析を行った。実験の結果から,(b)の可能性が支持され,批判情報呈示後もデマを信じ続ける人は,そうでない人と比べて,批判情報に視覚的注意を払っていることが示された。本研究の結果はThe 41th Annual Meeting of the Cognitive Science Societyに投稿し,フルペーパーで採択された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究計画通り実験を行い,分析から発表まで進めることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果から,批判情報を呈示されたあとも依然としてデマを信じる反応が一定の割合で見られた。その反応を視線データから分析したところ,批判情報呈示後もデマを信じ続ける人は,批判情報呈示後にデマへの信念を低減させる人と比べて,批判情報に対する視線の停留時間および停留頻度が多いことが示された。このことから,批判情報呈示後もデマを信じ続ける人は批判情報の認知処理の負荷が高かったことが示唆される。 2年目は,批判情報呈示効果の個人差について,個人差変数との関連から検討することを目的とし,実験と分析を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は,まず,購入したアイトラッカーの機種変更によるものである。交付額にもとづいて,アイトラッカーを購入予定であった機種(Tobii Pro X3-120: サンプリングレート120Hz)から低価格ラインのTobii Proナノ(サンプリングレート60Hz)に変更した。これによりアイトラッカーの購入費に差額が生じた。また,国際学会への出席を予定していたが,国内学会1件のみに変更になったため旅費の差額が生じた。これらを次年度に繰り越すこととなった。
|