研究課題/領域番号 |
18K12012
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
西崎 友規子 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 講師 (60705945)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マルチタスク / 自動車運転 / 認知資源容量 / 個人差 |
研究実績の概要 |
スマートフォン等の携帯情報端末の普及とともに,運転中のマルチタスク遂行が引き起こす重大な交通事故が後を絶たない。また,他者への配慮が欠けた自己中心的な運転者が引き起こす事故やトラブル,高齢運転者による悲惨な事故のニュースは珍しくなくなっている。運転行動は限られた認知資源を配分して,複数の認知情報処理を遂行するマルチタスクである。また,他車や歩行者とインタラクションを必要とする社会的行動としての側面もある。本研究は,マルチタスク遂行力を規定する複数の要因の特定とそれらの因果関係を明らかにし,認知資源容量の大きさが他者配慮などの社会性情報処理に及ぼす影響とその個人差を検討することによって,マルチタスク遂行力の基盤メカニズムを解明することを目的とした。 今年度は,マルチタスク遂行力とワーキングメモリ課題によって測定される認知資源容量の関連を検討するために,ドライビングシミュレータを用いた二重課題実験を実施した。実験参加者は,シミュレータ上に作成された狭い一直線の道をガードレールに接触しないように走行すると同時に,音声によって提示される計算課題を遂行するよう求められた。二重課題時の運転パフォーマンス(ガードレールへの接触回数)と認知資源容量の個人差の関連を分析した結果,ワーキングメモリ課題成績が低い(認知資源容量が少ない)実験参加者の中には,マルチタスク遂行によってパフォーマンスが低下しない人が一定数存在することが明らかになった。さらに,日常的なマルチタスク経験とマルチタスク遂行力には有意な関連が認められないことがわかった。これより,マルチタスク遂行力は,ワーキングメモリ課題によって測定される認知資源容量の個人差,また日常的なマルチタスク経験からは予測できないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,今年度はマルチタスク遂行力を規定する要因の特定に向けて,視覚探索課題などを用いた認知課題と,より実用的な課題であるドライビングシミュレータを用いた運転走行課題を用い,2種類の二重課題実験を行う予定であった。ドライビングシミュレータを用いた運手走行実験は完了したが,認知課題を一次課題とした二重課題実験については進捗が遅れている。その理由として,適切な負荷量の一次課題,および二次課題の選定と課題作成に複数の予備実験を行ったが,適切なレベルの負荷をかけるための刺激設定に予想以上の時間を要し,予定よりも大幅に時間を費やしたためである。さらに,使用予定であった実験室の予期せぬ空調機故障とその工事によって,予定の期間内に認知課題を用いた実験を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度,認知課題を用いた二重課題実験の実施が遅れたが,既に予備実験の多くを完了しており,次年度は本実験着手までに想定以上の時間は要しない予定である。また,本実験遂行のために,アルバイト員に実験者を依頼することを検討しており,実験遂行の促進が期待できる。さらに,当初からの予定である認知資源容量と社会性情報処理との解明に向けた二重課題実験も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況の理由に述べた通り,今年度は当初予定していた実験の1つを実施することができなかった。そのため,物品費(実験実施に必要なPC,ディスプレイなどの機材)と人件費(実験参加者への謝礼)に余剰が生じた。今年度予定していた実験は次年度実施する計画であるため,物品費と人件費として次年度使用予定である。
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