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2018 年度 実施状況報告書

イメージ生成能力の個人差が心的イメージ変換に及ぼす影響およびその神経基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K12014
研究機関広島大学

研究代表者

笹岡 貴史  広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 准教授 (60367456)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード心的イメージ / 三次元物体認知 / 心的回転 / 生体力学的制約
研究実績の概要

本年度は,心的イメージの変換過程を必要とする認知機能として三次元物体認知に注目し,イメージ生成能力の個人差と身体との関わりについて検討を進めた.まず,物体を手で操作することで物体の外観の変化を観察すること(能動的観察)によって,物体の外観のイメージ変換過程において手の回しやすさという生体力学的制約が影響するが,受動的に観察するとその影響が見られないという知見について,Experimental brain research誌において論文発表を行った.この成果は三次元物体の既知の外観に基づいて未知の外観を般化するという一種のイメージ変換過程において,個人の物体に対する経験の違いが及ぼす影響を明らかにしたものである.この点において,イメージ生成能力の個人差が心的イメージ変換に及ぼす影響を明らかにするという本研究の基礎的知見となる成果といえる.
さらに,本年度は3Dプリンターで作成した実物体の能動的観察を行うことによる効果について検討した行動実験データについて分析を進めた.能動的観察を行った被験者群(能動群)と能動群の被験者の視点から録画した能動的観察の動画を観察した被験者群(受動群)の間の違いに注目して分析を行ったが,能動群と受動群との間に有意な群間差が見られず,またイメージ生成能力の個人差との交互作用も十分に見出すことができなかった.
以上の結果を受けて,本年度は先行研究で生体力学的制約の効果が確認されている手や身体の線画を用いた心的回転課題や視点取得課題を用いて,イメージ変換過程におけるイメージ生成能力の個人差の影響を効率的に検出できるような実験パラダイムの検討を行い,本実験に向けた準備を進めた.これについては,2019年度より本実験を行い,イメージ変換過程におけるイメージ生成能力の個人差の影響を検討する.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在までの取り組みにおいて,本研究における前提であるイメージ変換過程における個人差を生み出す経験の効果については再現できている.一方で,経験による差,およびそれを生み出す脳内メカニズムを明らかにするには,現在の実験方法では効果量が小さい可能性があり,実験パラダイムの十分な再検討が必要である.
そのため,先行研究において,明らかに生体力学的制約の効果が生じることが確認されている,手や身体の線画を用いた心的回転課題(Sekiyama 1982; Parsons 1987, 1994)や視点取得課題(Parsons 1987)を用いる.さらに,近年の手の線画を用いた心的回転課題を用いた研究(Vannuscorps, et al., 2012)では,脳内で運動イメージを用いたシミュレーションによるイメージ変換過程と知覚的な分析による過程の二つが存在することが主張されており,それらの過程が利用されるバランスが個人によって異なることでイメージ変換過程に個人差が生じていることが推測される.以上の取り組みを進めることにより,身体や手のイメージ変換過程におけるイメージ生成能力の個人差の影響を効率良く検出することを目指す.

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況を踏まえ,実験パラダイムの再検討を行う.具体的には,これまで明確な生体力学的制約の影響が報告されている,Vannuscorps, et al. (2012)による手の線画を用いた心的回転課題や,Parsons (1987)による身体の線画を用いた視点取得課題を用いることで,イメージ変換過程におけるイメージ生成能力の個人差の影響を効率的に検出できるような実験パラダイムを検討する.
また,個人差を反映する心理尺度の精査も行うことで,個人差を効率的に検出できる指標の採用を検討する.例えば,本研究の申請時は,視覚イメージの鮮明さについての指標として広く用いられているVividness of Visual Imagery Questionnaire (VVIQ; Marks, 1973)を用いるとしていたが,視覚イメージにおいて物体イメージを形成する傾向,空間イメージを形成する傾向を反映する個人差指標であるVisual Imagery Style Questionnaire (VISQ)を用いることも検討する.

次年度使用額が生じた理由

実験パラダイムの大きな変更を行い,2019年度に実験に必要な物品(300千円程度)を購入する必要が出てきたため,2018年度の予算を一部繰り越した.

研究成果

(1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Ease of hand rotation during active exploration of views of a 3-D object modulates view generalization2019

    • 著者名/発表者名
      Sasaoka Takafumi、Asakura Nobuhiko、Inui Toshio
    • 雑誌名

      Experimental Brain Research

      巻: 237 ページ: 939~951

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s00221-019-05474-6

    • 査読あり

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公開日: 2019-12-27  

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