研究実績の概要 |
本研究の目的は,気持ち悪さという感情生起を支える認知的基盤について様々な方面からアプローチし,そのメカニズムを明らかにすることであった。平成30年度は主に認知心理学的手法を用いて,注意機能との関係性ならびに身体性との関係性を検討した。 注意機能については,注意の瞬き課題を用いて,感情対象の処理が心的回復力の個人特性と関係することを明らかにした (米満・井隼・山田,2018, 感情心理学研究)。 身体化については,ラバーハンド錯覚に利用し,自己の身体の一部と誤って認識させた対象を嫌悪物体と接触させた際に,自己の身体が接触したときと同様な嫌悪感が生じることを確かめた (Nitta, Tomita, Zhang, Zhou, & Yamada, 2018, Cognitive Research: Principles and Implications)。 他にも現在,3つの審査付き事前登録研究が進行中である (Coles et al., 2019; Morimoto et al., 2019; 佐々木・山田, 2019)。これらは全て感情や身体性と関連しており,来年度以降に成果報告できると予想している。またその他,嫌悪感の人間間感染,トライポフォビア,画像重複による嫌悪などの研究も同時に進行している。それらは多くのPreprintとして既に公開しているが,これらの研究も来年度は本格的に進展・完了させる このように,平成30年度の研究は,本研究の研究体制を確立し,嫌悪感についての理解を深め,以後のさらなる研究を促進する契機となった。
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