研究課題/領域番号 |
18K12017
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧岡 省吾 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60264785)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 共感覚 / 色 / 性格特性 / 多感覚対応 / 意味 |
研究実績の概要 |
あるモダリティへの入力が別モダリティの感覚を喚起する共感覚現象では,感覚間の対応関係(マッピング)が不規則である場合が多く,かつそのマッピングが個人間で異なる.研究代表者は,そのような共感覚現象の不規則性や個人差が自己組織化学習の枠組みによって説明可能であること,同様な不規則性や個人差が非共感覚者を対象とした実験でもみられることを明らかにしてきた.本研究では,非共感覚者における色と数字,色と意味とのマッピングの個人差とその経時的変化について検討することにより,モダリティ間マッピングと,それに基づく意味(semantics)の生成過程について,自己組織化学習の枠組みによる包括的な理解が可能かどうかを検証する. 2018年度は,共感覚を持たない人を対象に,数字と色,性格特性と色のマッピングに関する心理実験を行った.色については,数字の大小判断をSimon taskを用いて行うことで,数字と色の対応関係について,共感覚者にみられるのと同様な個人間での多様性がみられるかどうかを検討した.参加者は呈示された数字が5より大きいかどうかを,数字の左右に呈示される長方形の色に基づいて反応することを求められた(例:5より大きければ赤のある側のshiftキーを押す).予備実験の結果,反応時間の分散が大きく個人内での分析に適さないことが判明したため,課題を2つの数字の大小判断課題に変更した.参加者は,左右に並んで呈示される2つの数字のうち,大きい方の数字のある側のshiftキーを押すことを求められた.このとき,2つの数字のいずれかが赤,オレンジ,黄色,緑,水色,青,紫のいずれかの色で呈示され,数字によって反応の速い色が異なるかどうかを検証した.実験の結果,数字によって反応の速い色が異なり,かつその組み合わせが個人間で異なるという結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数字と色のマッピングに関する実験において,当初計画していた実験方法では安定した結果が得られないことが判明したが,タスクを変更することで,より安定したデータの取得が可能になった.性格と色のマッピングのマッピングについても予備実験を進め,2019年度中に実験を始める目処が立っている.数字と色の対応に関する心理実験については,2019年5月の31st APS(Association for Psychological Science) Annual Conventionで発表する予定である. 以上のような進行状況を踏まえ,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,2つの数字の大小判断を行う課題を用いて,数字と色のマッピングの個人間・個人内変動に関して更に詳しい実験を行う.具体的には,数字の種類を減らして刺激1種類あたりの試行回数を増やすことにより,より検定力を高め,詳細な分析を行う.さらに,数字を1つだけ呈示する実験との比較についても検討中である. 一方,性格と色のマッピングについては,2018年度の予備実験結果を踏まえて本実験の計画を立て,実施する.加えて,数字と性格のマッピングについても新たな着想を得たので,2019年度中に予備実験を開始する.以上の実験について,実験の実施はそれぞれ別の大学院生,4回生が担当するため,並行して実施可能である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018度は日程上の都合で国際学会への参加ができなかった。次年度使用額は、2019年度に、実験を担当した大学院生と研究代表者が国際学会に参加するために使用する。
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