研究課題/領域番号 |
18K12018
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
大山 剛史 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (40462668)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人間工学 / 認知科学 / 運動制御 / 利き手 / 上肢運動 |
研究実績の概要 |
運動の速度と精度の関係性における利き手と非利き手の違いについて明らかにすることを目的として実験を行った。 早い運動ほど精度が悪くなるように、ヒトの運動において速度と精度の間にはトレードオフの関係が存在する。このトレードオフの関係にはフィッツの法則と呼ばれる近似式が知られており、運動の距離と精度の比の対数を取った値によって運動時間の値を線形回帰によって近似できることが知られている。筆者らが過去に行ったシミュレーション実験において、身体の物理パラメータや手先への外力によって運動の速度と精度のトレードオフの関係が変化することが予想されている。本研究は手先に外力を加える条件における上肢の反復運動を運動タスクに採り、実際のヒトを被験者とした計測実験を行った。 右利きの被験者5名が実験に参加した。被験者は触覚デバイス(Touch X)の操作ペンを持って、指定された距離(10, 15, 20cm)で手先を往復するように、その際、運動の折り返し地点において指定した範囲(2, 4 cm)からはみ出さないように指示された。手先に外力が加わらない条件、運動を補助する力が加わる条件、運動を妨げる力が加わる条件の三条件を設定した。各被験者の右手及び左手の運動をそれぞれ計測した。 右手・左手の三条件について運動時間、運動の精度、運動距離を解析した。フィッツの法則に基づく線形回帰はいずれの条件でも有意だった。外力が加わらない条件においては右手の方が左手よりも運動の精度が良かったが、外力が加わる条件では外力が運動を補助する方向でも妨げる方向でも右手と左手の間に運動の精度の差はなかった。また、運動時間について手の左右と外力の条件を要因とした分散分析を行った結果、右手と左手で外力の影響が異なること、運動を妨げる外力が加わる条件では左右差がないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度においては各種の大学業務の激増によって、研究時間ならびに研究協力者の確保が極めて困難となり、当初計画から若干の変更を余儀なくされたが、その中において実施できたいくつかの実験において一定の成果が見込まれた。また、研究発表については多くの学会等においてオンライン発表の形式が整備されたことにより、従来と同程度の機会が確保できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の結果について、計測実験の結果に基づく計算モデルを導出することを目指す。また、右手と左手で運動の速度と精度の扱い方が異なることを踏まえた上で、より複雑な運動タスクにおいてどのような違いが表れ、その違いがタスクの遂行や運動の精度にいかなる影響を与えているかについて考察する。さらに、過去に行ったシミュレーション実験等では運動中のフィードバック制御を除外していたため、フィードバック制御が運動にもたらす影響の左右差についても調べていく。被験者の確保のため、実験用プログラムを被験者に送付して、オンラインによる計測の実施を現在検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務の激増等により、当初計画していた装置の年度内調達が困難となったことに加えて、研究発表が専らオンライン開催となり旅費が不要となったため、次年度使用額が生じた。
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