本研究は言語の理解と表出に多様なモダリティ表象(視覚表象や聴覚表象などの感覚表象、運動表象、言語表象など)が関与することを想定して、その処理過程を説明する脳機能モデルを構築することを目的とした。研究期間を通じて、言語刺激と非言語刺激を用いて、課題に応じて言語表象もしくは非言語表象を生成する際の処理に関与する脳領域を特定するためのfMRI実験を行った。 主要な結果として、提示する非言語刺激から内的に言語表象を生成する処理(非言語刺激から言語表象への変換処理)に左下前頭回(ブローカ野)が関与すること、入力刺激に関わらず言語表象を生成する処理に運動前野を含む中心前回と中心後回が関与することを示す知見が得られた。さらに先行研究の知見も取り入れて、言語刺激もしくは非言語刺激から言語表象もしくは非言語表象を生成する脳内処理過程を説明するモデルを作成した。このモデルは2023年5月の研究会にて発表した。現在は、これまでに実施した研究の論文執筆、2023年度に実施したfMRI実験の学会発表準備を進めている。 研究期間を通じて言語情報と非言語情報の変換、および言語表象生成に関わる脳領域の特定を進めることができた。さらに言語・非言語刺激の入力から言語・非言語表象を生成する際の脳機能結合性の解明へと研究を発展させていく計画である。下前頭回、運動前野、中心前回などの前頭葉を中心とした領域がそのほかの領域とどのように機能的に結合して言語の理解と表出に関与する情報処理を行っているかを解明する研究などへと展開させていく予定である。
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