研究実績の概要 |
本年度は,現象の背後に潜むメカニズムの推定に,メタ認知が及ぼす影響について検討を進めた.「メタ認知」は,客観的に自身の認知活動を捉えることであり,大きく「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」に2つに分けられる.メタ認知的知識とは,人間の認知特性,対象となる課題,そして適用可能な方略が目的にどのような影響を与えるかに関する知識である.一方,メタ認知的活動は,自身の認知活動をモニタリングするメタ認知的モニタリング,および,目標設定や変更,計画やその修正,そして方略の選択や変更を行うメタ認知的コントロールからなる(三宮,2008).このようにメタ認知は,様々な認知機能に関わる概念であり,現象の背後に潜むメカニズムの推定に影響を与えることが予測される.実験には,学部生41名が参加した.実験課題は,コンピュータスクリーン上に提示され,参加者は,観察される現象からその背後のメカニズムを推定する課題に取り組んだ.また,実験課題の終了後,メタ認知尺度(阿部・井田, 2010)により,個人のメタ認知の傾向を測定した.その結果,統計的な有意性は確認できなかったものの,メタ認知の傾向が低い参加者に比して,メタ認知の傾向が高い参加者において,現象の背後に潜むメカニズムの理解が進んでいる可能性が示唆された.今後は,本研究課題である局所的な規則から大局的な規則が創発される規則の階層性に対する認知において,メタ認知が果たす役割について,更なる検討を進める予定である.
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