本課題の最終年度である2021年度は、前年度までに実施したCoCr合金と純Tiの単一金属の摩耗状態およびCoCr合金と純Tiが接触した異種金属接触モデルにおいて片方の金属上でのみ摩耗が生じている状態での電気化学的な数値シミュレーションモデルの構築と計算結果の検証を基に、摩耗していない方の金属の面積を変化させた数値シミュレーションを行うことで、カソード反応が摩耗腐食に及ぼす影響について検討を行った。 数値シミュレーションに用いる各種パラメータは、CoCr合金と純Tiそれぞれの自然電位測定および静止状態と摩耗状態での分極試験から取得した。 数値シミュレーションに用いた異種金属接触モデルは、一部が摩耗している金属に摩耗していないもう金属が接触しているモデルであり、一部が摩耗している金属の面積および摩耗部の面積は一定とし、摩耗していない金属の面積を一部が摩耗している金属の面積の0倍(単一モデル)から20倍まで変化させた。数値シミュレーションの結果、単一金属、異種金属接触ともに非摩耗部の面積が増加するにともない摩耗部での電流密度は大きくなった。また、電流密度の値は摩耗しているCoCr合金にTiが接触している場合に最大となり、カソード部となるTiの面積の増加に伴う電流密度の増加率も最も大きくなった。これらの結果より、一部が摩耗している異種金属接触モデルにおいて、主にカソード反応が生じている摩耗していない金属の種類や面積は摩耗部の電流密度すなわち摩耗部の金属の電気化学的溶解に影響を及ぼしていることが明らかになった。
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