複数の節をまたぐような肢の再生現象は従前のモデルでは説明のつかないことが多い。一方、再生能を示す両生類などの肢の内部には柔らかい内臓のような構造がある。更に、解剖学において内臓は再生能の高い植物的器官とよばれている。2次元以上の細胞群が、自分自身と近接細胞の状態によってどのように変化してゆくのかをシミュレートするモデルが在る。しかし、実際の細胞群では細胞死が起きると空隙ができるし、周囲を全て細胞で取り囲まれている状況下でも細胞は分裂し新たな細胞を押し出す。このような場合、全体の細胞群がどう再配置されるのかをシミュレートする際には自由度が大きすぎるという難点が在った。そこでモデルを Polynomial-life(多項式生命)モデル上で構築した。 具体的には以下の2つを実施した。 ◯節のモデル化:節一つに対しては、内側に植物的な柔軟な組織、それを囲む動物的な筋肉などのより硬い組織、そして両者を仲介する血管・神経という構成のモデル化を行った。これは Polynomial-life 上では、2種類の多変数多項式とある演算として表現されるので、これらを設計した。 ◯肢のモデル化:複数の節をもつ肢(セグメント)を再現するため、節の「積み重ね」を設計した。植物の成長を模して垂直方向に積み重ねる・螺旋的に積み重ねる・あるいはそれらの組み合わせを試した。Polynomial-life 上では、これらは多項式同士の積で表せられるので、それを設計した。
|