研究課題/領域番号 |
18K12041
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
村松 和明 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90408641)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自転公転式撹拌 / 組織培養 / 血液細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自転公転式撹拌技術が細胞・組織培養に有用であること、及びこの撹拌技術を利用して、流体環境が主に血液細胞の特性にどのような影響を及ぼすか、を明らかにすることである。 生命科学研究や再生医療では、限られたドナー組織からより多くの正常細胞を単離することが重要となる。即ち、細胞にダメージを与えることなく、できる限り短時間でより多量の細胞を得ることが、その後の初代培養において細胞の増殖・生存性の向上や分化能の維持に繋がる。本研究の前者目的では、このような培養プロセスの課題における解決策を提供することができる。申請者らは、軟骨細胞の初代培養における細胞の単離操作に応用を試みたところ、自転公転式撹拌法は、従来の旋回振とうと比較して、細胞に与える物理的ダメージも少なく、同一質量当たりの軟骨片から2倍以上の生細胞を得ることができた。また、単離された軟骨細胞の表現型も正常な状態であった。これらの結果は、学術論文(JBB誌)に1件受理(印刷中)され、学会発表も計2件行った。 本研究の後者目的に関しては、血液細胞に対する血液循環の生理学的意義を解明することである。血液循細胞は生体内で絶えず動的環境の下に置かれているが、一般的なin vitro研究は静置環境で行われ、必ずしも血液細胞の性質を調べる上で最適な実験条件とは言えない。そこで、動的環境下で培養された単球細胞株THP-1の特性解析を進行中である。現時点において、流体刺激を受けた単球では、静置培養された単球と比較し、遊走過程で血液内皮細胞と接着する際に不可欠なL-セレクチンの発現が亢進する可能性を見出した。本内容については1件の学会発表がなされ、さらに現在2件の演題も登録中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、株化細胞や正常細胞を用い、2018年度前半(4-9月)に白血球の増殖・生存性を確認し、後半(10-3月)に刺激応答性の遊走活性や貪食能を評価することになっていた。実際には、細胞の種類がTHP-1に限定されたものの、評価項目についてはいずれも実施することができ、概ね順調に進んだ。特に、流体刺激を受けた細胞と静置培養された細胞間では、接着分子の発現や接着能に相違があり、動的培養された細胞の方が接着機能は高くなることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究結果において、動的流体環境は単球の接着性を亢進することが確認されたため、2019年度も当初の研究計画に沿って研究を進める。即ち、流体環境に伴うメカニカルストレスが、どのようにして接着分子の遺伝子発現の亢進をもたらすか、その分子機構について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度予算はほぼ計画通り執行したが、消耗品の購入で553円分が次年度へ繰り越しとなった。これは、残高が少額であったため必要な試薬の購入に充当できず、次年度での活用となった。
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