昨年度に引き続き、本年度は自転公転式撹拌技術を利用した動的in vitro培養法により、流体環境が血液細胞の特性にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、特に接着能や遊走能、貪食能に焦点を当てて解析した。 白血球は骨髄から末梢血に供給された後、炎症部位においてケモカインやサイトカインを受容し、血管内皮を透過し血管外へ遊走する。このとき、血管内皮は白血球と相互作用する膜タンパク質や糖鎖などの接着分子を提示し、白血球の遊走を助けている。一方、白血球も血液循環の過程で細胞の成熟化とともに接着分子の発現量を変化(増加)させ、遊走に備えている可能性が示唆されるが、この観点からの研究は全く行われていない。 これまでの2年間で、静置環境と比較し動的培養されたTHP-1由来の単球は、L-セレクチン等の発現が亢進することを見出したので、本年度はラット骨髄から単離した正常血液細胞(主に単球画分)を用いた研究を実施した。その結果、株化細胞で得られた結果と同様に、動的環境下では正常な血液細胞も接着分子の遺伝子発現が亢進されることを見出した。
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