研究課題/領域番号 |
18K12047
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
市川 純 福岡大学, 医学部, 講師 (70368207)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨髄間葉系幹細胞 / イオンチャネル / TRPC6 / 機械刺激 / 細胞周期 / 増殖 / 細胞骨格 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究は、再生医療現場で臨床応用研究が最も進んでいる骨髄間葉系幹細胞(bone marrow mesenchymal stem cell, 以下BMSC)における、機械刺激応答カチオンチャネルTRPC6を介した細胞周期制御機構の解明を目的とする。 これまでの研究で、siRNA法を用いてBMSCのTRPC6発現を抑制するとG2/M期にarrestすること、TRPC6チャネルの特徴である受容体刺激と機械刺激の協働応答がM期に増強すること、この応答がアクチン骨格を破壊するサイトカラシンD処理により減弱すること等を明らかにしてきた。またサイトカラシンD処理による増殖停止も確認できた。以上のことから、BMSCのTRPC6を介した機械刺激応答が細胞骨格による調節を受け、細胞増殖、特にM期進行と直接的に関わる可能性が示唆された。 さらに、受容体刺激と機械刺激の協働作用が増殖に及ぼす効果を直接的に検討した。具体的には96穴培養プレートにBMSCを播種し、受容体刺激および機械刺激の同時刺激を加えた際の細胞数の推移を、calcein染色あるいはMTTアッセイ法により解析した。その結果、同時刺激により飛躍的に増殖促進効果が得られることが明らかとなった。これらの増殖はTRPC6特異的阻害薬で抑制されることも併せて確認できた。受容体刺激あるいは機械刺激単独では増殖促進効果が弱かった(あるいは有意差が確認できなかった)。これらの結果より、増殖における両刺激の協働効果の有用性とTRPC6チャネルとの深い関連性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BMSCに対し受容体刺激単独、機械刺激単独、受容体刺激および機械刺激を同時に加えた群で増殖速度を詳細に検討した結果、同時刺激により増殖速度が最も亢進すること、受容体濃度や機械刺激強度によっては抑制へと逆転することが明らかになった。これらの増殖はTRPC6特異的阻害薬により抑制された。以上の結果より、TRPC6チャネルを介した受容体刺激・機械刺激協働作用と増殖との密接な関連がより明確になった。 受容体刺激濃度および機械刺激強度による増殖効果の逆転については、至適条件の同定やメカニズムの解明等、さらに慎重な検討を必要とする。現在、イオンチャネル活性との関連を明らかにするため、刺激種類(単独、同時)および強度を変えてチャネル活性を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、単独あるいは同時刺激、そして強度の組み合わせを変えてイオンチャネル活性を解析し、プロファイルを作成して増殖効果との関連性を精査し、メカニズムの解明へと繋げる。 並行して、これらの刺激により増殖促進状態下にあるBMSCの品質検討(正常な多分化能を維持しているか、癌化の恐れがなく安全であるか)を行い、問題なく臨床応用可能であるかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検討を進めるうちに予想外の結果、すなわち受容体の濃度や機械刺激の強度の組み合わせによっては増殖が抑制されることが判明したため、そのメカニズムを明らかにするためには、少なくとも本研究計画内でイオンチャネル活性との相関性を解析する必要があると考えた。費用はそのための消耗品費に充てる。その他、必要に応じて受託解析費、学会参加費、論文投稿経費として使用する予定である。
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