研究実績の概要 |
今年度は、引き続きコロナの関係で少数の外来患者でのみ研究が行えた。仙骨と第11胸椎棘突起の皮膚表面を同時刺激するT-SESでの歩行速度は仙骨部表面刺激(SES)よりも有意に大きかった。また、T-SES,SESでCTによる脊椎アラインメント解析では、胸腰椎はほぼ平行に前方移動するものの仙骨前傾角はほとんど変わらなかった。筋電図解析では筋放電の振幅はT-SES, SESで有意差はなかった。昨年度報告したくも膜下出血後四肢麻痺でT-SESを組み合わせた足漕ぎ車いす走行訓練を行っていた女性では、電気刺激なしでも足漕ぎ車いす走行の速度・距離共にが前年度より飛躍的に増加し、健常者の歩行速度に近く速度で実用的距離を走行できるレベルになり、イオンモールで長時間買い物ができるまでになっている。 研究期間全体では、非刺激時よりもSES、T-SESで歩行速度が増加することを示した。SESの場合は、そのCT解析より骨盤と体幹の前傾も伴うことが示され、SESによるNeuromodulation効果に加えこの前傾も速度増加の一要因となっている。T-SESでは仙骨前傾角が顕著でなくなったため、その歩行速度の増加は電気刺激がL2にあるCPGおよび仙骨神経根の求心性繊維を刺激することによって生じるNeuromodulation効果によるものとみることができる。また、T-SESを脊髄小脳変性症、腰部脊柱管狭窄症、頚髄損傷不全四肢麻痺、クモ膜下出血による四肢麻痺者に適用した。車いす不要の歩行障害者では、歩容の改善を伴う歩行速度の増加を認め、歩行不能の患者では足漕ぎ車いすを適用しその走行速度と走行距離の増加がADL上実用的なレベルまで増加することが判明した。したがって、T-SESは歩行障害の改善そしてT-SESと足漕ぎ車いすの組み合わせは重度の歩行障害からの離脱に有用であることが判明した。
|