大脳白質病変は,高齢者の7-8割に見られ,アルツハイマー病や脳血管性認知症との関連も注目されており,主な原因は血液潅流障害である.また,神経線維は虚血に非常に脆弱であるため,ヒトの急性脳虚血では白質障害が重要視されている.脳組織では白質は灰白質の奥となるために神経線維の詳細な三次元イメージングには数ミリ深い部位でμmオーダーの空間分解能が必要である. 本研究では,主にショートマルチモードファイバー(SMMF,直径125μm,長さ7mm)と光波断層画像測定技術(optical coherence tomography; OCT)を用いて約6mm程度の深い部位で神経線維の三次元イメージングを行う基盤技術を立ち上げ,神経線維の形態情報係を明らかにし,大脳白質病変や急性虚血などの疾患に対して貢献できる新しい知見を得ることを目的とする. 昨年までは、生きたラット脳にSMMFを挿入して、三次元源断層画像測定を行い、神経線維の空間配置や密度などに関する情報を取得した。最終年度では、SMMFの挿入に際して組織の変形が少なく、スムーズな挿入が行えるように放電によりSMMFの先端を球状加工し、放電条件、結像光学特性との関係を明らかにした。さらに、三次元画像の高精度化には、位相画像の測定が有効であることから、SMMFを用いた新しい位相画像測定の原理確認を行った。通常のSMMFを用いたOCTは、二次元のマイケルソン干渉計をベースにしており、位相ドリフトで位相画像測定が困難であるが、新規にSMMF画像を2分割し、位相基準領域を設置して、差分位相により位相ドリフトの低減を行った。この方法の有効性を実験的に示し、理論的な見積りとも整合性が得られることを確認した。これにより、SMMFを用いて生きたラット脳の深部組織活性の情報が得られる可能性が示唆された。
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