研究課題
スマート手術室や在宅医療、予防医学への期待、自動運転やロボットの普及など、日常的なヒトの健康状態や情動を把握できる技術の必要性は今まで以上に高まってきている。本研究では、非接触で簡単に、高速に、定量性良く血液動態を把握する技術の確立を目指す。これまでにも、カメラによる脈波・酸素濃度等の生体計測はいくつか行われてきているが、定量性の面で課題がある。その課題を解決しようとするとセンサ接触や走査が必要となり、簡便さや迅速性が犠牲になっていた。本研究の新たな空間分解分光法は、点や線光源を使わなくても平面波で表層組織の血液動態を定量化できるため、非接触的な2次元血液動態計測法の創出が期待できる。本年度は、系統的誤差要因の解明と補正法の検討のために、モンテカルロ法による光伝播シミュレーションを行った。近赤外光の平面波が照射された対象からの拡散反射光強度や光路長を定量的に算出し、その条件下での定量計測の実現可能性を探究した。H30年度に主に検証した項目は、従来の空間分解法との測定感度の比較と表皮・真皮・脂肪組織の吸収係数と散乱係数の影響の解明である。理論解析の結果、これまでの空間分解法に比し、真皮の測定感度が2倍以上になり、表層組織に特化した情報の取得が可能であることが示唆された。また、各層の光学定数を変化させても表層感度を強調できることが示された。理論結果を実験により検証するために、新たな空間分解法が使用できるよう周辺光が測定できる多チャネル小型センサを試作し、実測における光強度分布の傾向が理論と一致することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
これまでに開発してきた解析ソフトウェアをベースにして今回の平面波計測の解析に対応できるようにプログラミングを行い、コーディングと妥当性の検証を予定通り完了し、当初から予定していた表皮・真皮・脂肪組織の吸収係数と散乱係数の影響の解明もできた。さらに、理論と実験の比較を行うために、生体に簡便に貼り付けできる小型の多チャネルセンサを開発し、理論結果の妥当性も確認することができた。理論、実験ともに当初の予定通りに進展した。
開発した光伝播解析ソフトを用いて、より多様な誤差要因について検討する予定である。次の3点について解析を実施する。(1)入射光と対象との角度や対象表面の曲率、(2)皮膚表面のμm~mmオーダーの形状、(3)広範な波長の影響。これらの影響とその補正法について理論的に探求し、実測において確認する。理論と実測の差異が大きい場合、モデル等を見直し、より実測に即した特性を有する理論モデルを検討する。それらの検討を通して、誤差要因の補正法の確立を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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