研究課題
先端計測を統合したスマート手術室や在宅医療、予防医学への期待、自動運転やロボットの普及など、日常的なヒトの健康状態や情動を把握できる技術の必要性は今まで以上に高まってきている。本研究では、非接触で簡単に、高速に、定量性良く血液動態を把握する技術の確立を目指している。これまでにも、カメラによる脈波・酸素濃度等の生体計測はいくつか行われてきているが、定量性の面で課題がある。その課題を解決しようとするとセンサ接触や走査が必要となり、簡便さや迅速性が犠牲になっていた。本研究の新たな空間分解分光法は、点や線光源を使わなくても平面波で表層組織の血液動態を定量化できるため、非接触的な2次元血液動態計測法の創出が期待できる。本年度は、前年度に検証された系統的誤差要因の解明と補正法のアルゴリズムを実際の装置に実装するとともに、計測の利便性を向上させるための小型化・集積化を進展させた。センサーモジュールは2波長LEDと2個の光強度センサ、無線IC、駆動回路からなる。無線ICとしてBluetoothを採用し、無線IC内のマイクロコンピュータに通信のプログラムを組み込むとともに光吸収係数や酸素飽和度を算出するエコードも埋め込み、部品数とセンササイズを低減させた。この試作開発によって、内視鏡手術で用いる11mmポートも通過させることが可能となり、多くの手術へ適用も視野に入ってきた。本手法は表層組織の測定感度を増強できるため、様々な生体組織での使用について解析していけば当初予定していた非侵襲計測だけでなく手術現場等での血液動態計測に有用と考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度までに解析した光電波解析結果を用いて、装置の試作開発を行った。また、装置のファームウェアの開発も行い、通信とともに演算も可能なプログラムにして、マイコンを新たに設けることなく無線ICのみで動作可能にしたことで、大幅な小型化・集積化に成功した。これにより、当初考えていた計測以上の多くの用途(内視鏡や体内埋め込みなど)のアイデアが出てきた。当初の予定を完了するとともに、これまで想定していなかった有効な用途への対応も進めつつあり、当初の計画以上に進展している。
開発した試作装置により生体組織ファントムと生体を対象として実測を行い、実際の測定における課題の抽出を行う。定量性と誤差要因を中心として理論解析との差異を検証し、ヘモグロビン濃度の計測値の正確度向上を目指す。また、課題の抽出により、理論との差異が大きい場合は、光伝播解析(コンピュータシミュレーション)からの検証を再度行い、実測と理論解析を繰り返し行うことで精度改善を図る。
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