研究課題/領域番号 |
18K12057
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角 昭一郎 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80252906)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝細胞増殖因子(HGF) / マクロカプセル化膵島 / エバール膜 / キトサンゲル / 皮下移植 / 血管新生 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
組織適合性が高いエチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)の多孔質膜でバッグを作り、この中に、温度感応性にゲル化するキトサンゲルに包埋したラット膵島を封入したマクロカプセル化膵島(MEI)を作製して、実験に供した。なお、このMEIの腹腔内移植によって糖尿病マウスの血糖が低下することはすでに発表している。 MEIのキトサンゲル中にHGF、bFGFを添加、または何も添加しないものを、糖尿病マウスの皮下に一期的に移植したところ、何も添加しないものやbFGFを添加したものでは血糖の低下はなく、体重も徐々に減少して、治療効果は確認できなかったが、HGFを添加した場合は、高血糖の改善が見られ、体重も徐々に増加した。特筆すべきは、移植4週間後に行った腹腔内ブドウ糖負荷試験の成績で、一夜絶食後の空腹時血糖はHGF群で正常マウスとほぼ同等の値を示した。無添加群やbFGF群では正常群に比し優位に高値であった。この結果は、HGF群で絶食時に血糖を正常化させるに十分なインスリン分泌が得られることを示しており、1型糖尿病の患者に置き換えると、夜間に外因性インスリンを必要としない点で、低血糖のリスクが軽減されることを示唆する。 血液検査でもHGF群のインスリン値は無添加・bFGF群に比し優位に高く、代謝や腎機能の指標も正常群に近い値を示した。また、組織学的検討では、HGF群でデバイス周囲の血管新生を認めたが、癒着や被膜形成などの異物反応は軽微であった。また、in vitroの実験で、キトサンゲルはHGFを徐放する効果があることや、培養液中へのHGFの添加によって低酸素による膵島細胞の壊死が軽減することが示された。これらの結果は、キトサンゲルにHGFを添加することで、マクロカプセル化膵島の一期的な皮下移植によって一定の糖尿病治療効果を期待できることを示しており、今後の応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目でin vitro実験でキトサンゲルからHGFが徐放されることの確認や、低酸素における膵島細胞壊死をHGFが軽減することを確認でき、現在、論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マクロカプセル化膵島皮下移植の改良に取り組み、移植効果の長期化などを示したいと考えている。 ブタ膵島や、ヒト膵島の研究転用が可能となった場合は、これらを使ったマクロカプセル化膵島を作成し、糖尿病マウスの皮下に移植して、その有効性を検討 する。
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