ラマン分光分析による個別化医療に役立つ新規バイオマーカーの開発を目的として研究を展開してきた。従来の遺伝子などのバイオマーカーだけでは評価が困難な腫瘍内のがん細胞の性質や動態、がん微小環境を明らかにするための新たなツールとして、ラマン分光・イメージングに着目し、新たな層別化につながる新規バイオマーカーを探索してきた。ヒトがん細胞を移植したがん転移モデルを作製し、ラマン分光分析を行った。その上で肉眼所見、既知の腫瘍マーカーの発現、関連する遺伝子や蛋白発現とその局在、病理組織学的所見、またヒト検体の場合は、臨床所見を含めた解析を行い、それぞれのがん組織におけるラマンスペクトル上に見いだされる変化がバイオマーカーとして利用可能か検討したところ、ラマンスペクトル上の特徴量(ラマンピークの波長シフトおよびピーク相対強度)と病理組織学的所見に明らかな相関を見出すことに成功した。ラマン分光・ラマンイメージングは組織切片の形態学的特徴に加えて、分子の局在に関する情報を可視化するツールとして、臨床における病理組織検査にも応用可能であることを実証した。
|