最終年度である2020年度は、前年度に構築した線維組織への選択性を高めた光イメージング用のリポソーム製剤の機能評価と最適化を行った。FGFレセプターおよびコラーゲンなどの線維に親和性を有する短鎖ペプチドを修飾したリポソームを調製した。蛍光イメージングのため、in vivo imaging用にDiD(Donor)およびDiR(Acceptor)を、共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察のためにDiO(Donor)およびDiI(Acceotor)を用いてリポソームを調製した。ブレオマイシン誘発性肺線維症モデルマウスに、調製したペプチド修飾リポソーム製剤を肺投与した。病巣への集積性をリアルタイムin vivo imagingおよび肺を摘出してのex vivo imagingで評価したところ、高い病巣への集積性と、少なくとも投与後24時間にわたる滞留性が示された。また、詳細に線維組織に選択性があるかを評価するため、生体内凍結技法によって作成した凍結肺組織切片の観察による二次元的な画像評価と、組織透明化技法を応用して作成した透明化肺の三次元的な画像評価を行った。その結果、マッソントリクローム染色やコラーゲンなどの線維構成成分の免疫蛍光染色で示される線維部位にペプチド修飾リポソームが選択的に集積し、強い蛍光を示すことが明らかとなった。以上の結果から、本研究で構築した肺投与型リポソーム製剤は高い肺線維組織への選択的な集積性を有しており、ヒトに利用可能な検査薬を内封することで病巣を検出できる可能性が示唆された。
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