研究課題/領域番号 |
18K12069
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
松浦 宏治 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (70443223)
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研究分担者 |
高田 耕児 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (40530621)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動精子 / マイクロ流体デバイス / 酸化的リン酸化 / 温度勾配 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の運動精子分離および精子機能評価に関する要素技術の検討を行った。 直径0.05 mmのマイクロチャネル内では運動精子はらせん運動しやすくなることを我々は見出している。この現象を利用して、細孔アレイを有するフィルムを介して効率的に運動精子を回収できると考え、レーザー加工で細孔の直径を制御したフィルムを介した運動精子分離用デバイスを試作した。温度勾配をこのデバイス内で発生させるための検討を行った。別の機構として、dynamic lateral displacement (DLD) マイクロデバイスを用いた運動精子の分離を試みた。運動精子の分離は現在のピラー間隔(0.025 mm)では困難だった。ピラー間隔を小さくするか流速を上げることにより、粒子分離閾値を下げて水力学的粒子半径が相対的に大きい運動精子を分離できるか検討する。 運動精子の運動能評価としては1 s間の運動速度だけではなく、数時間における精子運動距離も今後評価すべきと考えている。そのために、50度に傾けたガラスキャピラリ内を運動精子が泳ぎ上がるようにし、4時間処理時の運動性評価系を構築した。不運動精子だけを含む液にこのガラスキャピラリを挿入した場合、内部に精子は入らなかった。圧力負荷有無における精子運動評価に適用したところ、運動精子の最長距離は圧力負荷精子において有意に減少した。当実験系は精子内の解糖系や酸化的リン酸化活性と長時間精子運動との関連性の議論に貢献する。 三次元デジタルホログラフィ顕微鏡を用いれば観察対象物の屈折率分布が得られるために、観察対象物の厚みに関する情報が得られる。今回、ブタ精子を観察し、頭部構造に着目して三次元画像構築と高さ情報の取得を行った。精子頭部に厚みのある三次元復元像が得られた。精子頭部の屈折率分布の違いからDNAのパッキングが分かる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・デバイスの構築と運動精子回収に関する評価が若干遅れ気味であるが、それ以外の部分はよく進んでいる。 ・キャピラリアッセイが長時間評価に使えそうということが分かり、酵素代謝の制御によって、人工授精効率を上げるアイディアを見出せるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
・デバイスの構成に関する検討、およびデバイスの運用、センサーやサーモグラフィーを用いた温度勾配の評価を今後検討する。 ・市販のマイクロデバイスを温度勾配や物質濃度勾配を発生させる形で運動精子評価を行い、運動精子分離におけるデバイスの有用性を比較できるようにする。 ・代謝系と長時間運動速度の評価も課題であると考え、エネルギー代謝に関わる添加物を加えた際の運動速度変化に関する実験系の構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加する想定であったが、平成30年度は国際学会に参加しなかったため、その分の旅費を執行しなかった。2019年度に国際学会に参加するのであれば、その参加費・交通費に充てることを検討する。そうでなければ、実験用試薬購入に充てる計画である。
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