研究課題/領域番号 |
18K12073
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研究機関 | 北海道情報大学 |
研究代表者 |
越野 一博 北海道情報大学, 経営情報学部, 准教授 (90393206)
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研究分担者 |
平野 祥之 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00423129)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / ノイズ除去 / PETイメージング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ニューラルネットワークを持つ機械学習を用いて、PET(陽電子断層撮影)・時空間4次元データに対する新たな薬物動態解析法を構築することである。PET画像には、放射性同位元素の崩壊に起因する統計ノイズが含まれる。これが、PET画像における誤差の本質的な原因であり、特に投与放射能量が低いときにその影響は支配的になる。ノイズを除去し、正確なPET画像を提供することは、画像診断精度の向上に貢献する。 昨年度は、PET画像の元になる投影データに対して断層(2次元)ごとにノイズ除去を行うためのニューラルネットの構築とその性能評価を行った。ピーク信号対雑音比の向上は認められたが、体軸方向の放射能カウントの不連続性が顕著であった。当該年度は、この問題を解決するため、1)3次元ノイズ除去、2)ノイズ除去により低下する解像度の復元、を行うニューラルネットワークを構築した。 ノイズ除去性能の評価においては、ノイズなし投影データを基準とするピーク信号対雑音比を指標とした。学習では使用しない投影データ30個を対象に、昨年度の断層単位での手法と当該年度の改良した手法により、ノイズ除去を行った。ピーク信号対雑音比は35.7±0.5dBから38.0±0.5 dBへと大きく改善し、体軸方向の不連続性低減が認められた。ガウスノイズを対象とした研究は数多いが、ポアソン分布を対象にノイズ除去が可能であることを示したことは非常に意義のある本研究の成果である。 臨床検査に即した状況および被ばく量低減に向けた本手法の評価のため、昨年度に構築したモンテカルロ・シミュレーション系を用いて、低ノイズのデータを生成した。そのデータから任意の統計量のデータをサンプリングするプログラムを開発し、任意の量のノイズデータに対する評価系の準備が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の異動による新規研究室立ち上げに時間を要したため、当初の計画よりもやや遅れている。しかしながら、3次元データを対象とするニューラルネットワークを構築し、ピーク信号対雑音比について顕著な改善を示すことができた。モンテカルロ・シミュレーション系と関連プログラムの開発は完了しており、現実の状況により近いデータを使っての性能評価や手法の改良を行う準備が整っている。薬物動態パラメータ推定用ニューラルネットワークの比較対象となる既存解析手法については準備が終わっている。 以上から、最終年度に進捗の遅れを取り戻し、研究を完了することは十分可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、以下の2点を重点的に遂行する。 1) 画像診断に重要な指標である薬物動態パラメータ推定のためのニューラルネットワークの性能評価を行う。同一投与放射能量の条件下で、薬物動態パラメータの推定精度を既存解析手法と比較する。 2) 内部被ばく量を指標とする本手法の性能評価を行う。既存解析法と本手法による 推定精度が同等になる投与放射能量を定める。投与放射能量を内部被ばく線量へ換算し、放射線防護の観点からも本手法の有用性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ニューラルネットワークにもとづく機械学習に対して、性能要件を満たすコンピュータリソースが、研究計画調書作成時よりも低額で購入可能であったため、本年度の計画遂行に最低限必要な助成金の支出に留めた。
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