時間放射能濃度曲線を入力データとするニューラルネットワークを構築した。その概要は以下の通りである。入力関数を2系統の1次元畳み込みに入力する。1つ目の畳み込みは、平滑化とサンプリングの役割を持つ。2つ目の畳み込みは血流量推定に利用する信号の時間領域を重み付けするゲートの役割を持つ。これら2つの畳み込みからの出力信号間で要素ごとに積を取り、利用すべき時間領域が重み付けされた信号を得る。その信号を多層の畳み込み層に入力し、特徴量を得る。組織時間放射能濃度曲線についても同一の構成を持つ独立なサブネットワークへ入力し、特徴量を得る。入力関数と組織時間放射能濃度曲線のそれぞれについて得られた特徴量を、2成分を持つ単一の信号と見なして、全結合層に入力して血流量を推定する。 本研究で構築したニューラルネットワークの推定性能を評価するためのシミュレーションを行った。231個の入力関数を訓練用の181個とテスト用の50個に分けた。血流量の範囲は0.1以上2.0以下の乱数とした。入力関数と仮定した血流量から薬物動態モデルに基づいて組織時間放射能濃度曲線を発生させた。その組織時間放射能濃度曲線にノイズを加えた。発生させた組織時間放射能濃度曲線18100個と対応する入力関数を用いて、ニューラルネットワークを学習させた。その後、学習に使用しない入力関数から、訓練データと同じ条件でテスト用の組織時間放射能濃度曲線を5000個発生させた。テストデータに対する血流量の推定誤差は-0.3±12.4%、真値との相関係数は0.971であり、ニューラルネットワークによってバイアスを抑制し血流量推定が可能であることを示した。
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