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2019 年度 実施状況報告書

血管治療を目的とした生体親和性と界面水和の相関理解に基づく分解性機能材料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K12074
研究機関東京大学

研究代表者

福島 和樹  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70623817)

研究分担者 黒田 吉則  山形大学, 医学部, 助教 (00534166)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード生分解性ポリマー / 機能材料 / 生体親和性 / 水和
研究実績の概要

本研究の目的は、これまでの研究代表者の生分解性ポリマーの界面水和と生体親和性の相関に関する知見を駆使し、主鎖と側鎖の両方にエーテル基を導入した生分解性ポリマーを設計・合成し、現行の血液適合性ポリマーに匹敵するかそれ以上の抗血栓性を示す分解性ポリマーの創出を目指すものである。そして、ポリマーの構造や組成が及ぼす細胞との相互作用、生分解性、水和状態への影響について明らかにし、水和を基軸とした生体親和材料の設計原理を導出する。
平成30年度には、エーテル基を含むラクトンモノマー(5MDO)の合成とポリ(カーボネート/エーテル/ウレタン) (PCEU) の合成に取り組んだ。
令和元年度は、これらの合成の継続と得られたポリマーの特性評価を検討した。ラクトンモノマーの合成は、前年度に前駆体の合成まで完了していたが、生体親和性に寄与する機能団を導入する最終段階の反応において、前駆体の溶解性の問題から反応溶媒の最適化に時間を要した。また、副反応(未同定)が競争するため、数種の機能団の導入を検討したが、目標とする機能性モノマーが得られたのは1例だけであった。当年度は当該モノマーの精製と構造同定を完了し、令和二年度にこの開環重合を検討する。
また、前年度に親水的な表面特性を示すことを確認していたPCEUの血小板粘着性を調べたところ、主鎖にエーテル構造を導入したことによる大きな血小板粘着抑制への寄与は確認されなかった。試験回数が少ないため今後、再現性の確認が必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

エーテル基を含むラクトンモノマーの合成は難航したものの、目標とする構造要素を含むモノマー(5MAcDO)の合成は達成できた。また、当初の予想通りではなかったが、PCEUの血小板粘着性に関して知見が得られた。今後の検証は必要であるが、水和構造解析も行うことで、単純な親水性の増加だけでは高度な生体親和性の発現には十分条件ではないことを示唆する、学術的に興味深い結果となった。一方、上記ラクトンモノマーに関連した合成ルートにおいて、側鎖にエーテル基を導入したポリカーボネート(PMDO)の合成に成功し、これまでの研究代表者の開発ポリマーとの比較を行い、ポリマー構造と水和、血小板粘着との関係に新たな知見を得ることができた。このように、「主鎖と側鎖の両方にエーテル基を導入した生分解性ポリマーを設計・合成」は継続できており、「水和を基軸とした生体親和材料の設計原理」に関しても進展が見られていることから、一定の成果が得られていると言える。

今後の研究の推進方策

ラクトンモノマー5MAcDOのスケールアップ合成と重合を検討し、生体親和性の評価、水和構造解析を優先して行う。研究分担者と協力して各ポリマーの生体毒性の評価も進める。また、当初計画でまた検討できていないラクトンモノマー(3MDO, 6MDP)の合成と重合も検討する。これらに加えて、PMDO類似体の合成も検討し、最終目標である「現行の血液適合性ポリマーに匹敵するかそれ以上の抗血栓性を示す分解性ポリマーの創出」の達成を目指す。

次年度使用額が生じた理由

試薬や消耗品の購入に若干の余裕が生じたため。2020年度の物品費として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] The University of the Basque Country(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      The University of the Basque Country
  • [雑誌論文] 機能性脂肪族ポリカーボ ネートの設計と生分解性 バイオマテリアルへの展開(特集:2019年度日本バイオマテリアル学会各賞紹介 科学奨励賞)2020

    • 著者名/発表者名
      福島和樹
    • 雑誌名

      バイオマテリアル -生体材料-

      巻: 38 ページ: 16-17

  • [学会発表] 機能性脂肪族ポリカーボネートの設計と生分解性バイオマテリアルへの展開2019

    • 著者名/発表者名
      福島和樹
    • 学会等名
      第41回日本バイオマテリアル学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] バルクバイオマテリアルへの応用を指向したエーテル型側鎖による脂肪族ポリカーボネートの生体親和性向上2019

    • 著者名/発表者名
      福島和樹・高橋順子・Valentina MONTAGNA・箱崎俊太・羽賀悠太・Haritz SARDON
    • 学会等名
      第29回日本MRS年次大会
  • [学会発表] Monoether-tagged biodegradable aliphatic polycarbonates as a highly biocompatible building block2019

    • 著者名/発表者名
      Kazuki FUKUSHIMA, Yuta HAGA, Mai SANO, Masashi OJI, Junko TAKAHASHI, Shigekazu YANO
    • 学会等名
      The 16th Pacific Polymer Conference
    • 国際学会
  • [図書] 生分解,バイオマスプラスチックの開発と応用(第2章16節 脂肪族ポリカーボネートへの機能化付与と応用・生分解性)2020

    • 著者名/発表者名
      福島和樹
    • 総ページ数
      560
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-782-4

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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