研究課題
生体親和性の発現に寄与する水和水の形成に有利な構造を導入した脂肪族ポリエステル・ポリカーボネートを設計・合成した。側鎖の水和性官能基と主鎖の極性結合部位との距離により、形成される水和水の構造が変化し、生体親和性も大きく変化することを見出した。また、加水分解性が比較的遅いとされる脂肪族ポリカーボネートも、側鎖の水との相互作用を制御することにより、分解速度が大きく変化することも明らかとなった。また共重合等によって、上述の分解性を示すポリマーの主鎖に水和に有利な構造を導入する分子設計も検討したが、共重合比などの影響もあり、側鎖型ほどの生体親和性の向上は見られなかった。このため、新たに1繰り返し単位の主鎖内に分解に寄与する構造と水和に寄与する構造を含み、さらに水和性の側鎖を導入した環状エステル系モノマーを設計・合成した。当初計画の複数の合成経路で問題が生じたが、1種、目標とする構造要素を含むモノマーの生成を確認し、現在、重合性の評価を行っており、継続的に進めていく。合成戦略上、いくつかの変更を余儀なくされたが、その過程でこれらのモノマー合成が抱える潜在的問題であった出発物質の天然・生体分子由来物質への置き換えが達成された。生体内動態の評価は今後必要であるが、これまでの石油由来の出発物質を用いた機能性脂肪族ポリエステル・ポリカーボネートに比べて、分解生成物に対する安全リスクが低減できる可能性があり、また現在の潮流となっている「脱炭素」社会への貢献にも寄与する技術の基盤としても期待される。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
ACS Biomater. Sci. Eng.
巻: 7 ページ: 472-481
10.1021/acsbiomaterials.0c01460