研究課題/領域番号 |
18K12077
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 晋一 京都大学, 工学研究科, 助教 (50444104)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 核酸 / 刺激応答性 / ナノゲル / タンパク質 / シャペロン |
研究実績の概要 |
申請者がこれまでに研究を進めてきたオリゴ核酸置換多糖ナノゲル(核酸クリップナノゲル)のさらなる機能化とその基礎物性の解析および生体高分子(タンパク質、核酸等)との相互作用について基礎的な知見を得るとともに、生体高分子の構造、機能を制御し得る核酸クリップナノゲルの構築を進める。2019年度は、オリゴ核酸置換多糖多糖のナノゲル形成挙動および温度変化に伴うナノゲル構造変化、さらには生体高分子との相互作用を詳細に解析することを目的とした、蛍光分子修飾オリゴ核酸置換多糖の合成およびその特性について解析を行った。オリゴ核酸置換多糖の標識に複数種の蛍光分子を用いることで、ナノゲル構造変化の解析、細胞や生体内でのナノゲルの動態、生体高分子との相互作用挙動解析などが可能になる。まず、アジド化プルランにローダミンおよびフルオレセインを修飾した蛍光分子修飾アジド化プルランに、グアニンおよびシトシンに人工核酸であるBNAを用いた6merオリゴ核酸を導入し、相補的な配列を有する二種類の蛍光分子修飾オリゴ核酸修飾プルランを合成した。この相補配列を有する蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルラン同士を混合しその会合をDLS測定により検討したところ、90 nm程度のナノ微粒子(ナノゲル)を形成していることが確認された。またナノ粒子形成後、温度を60℃まで昇温させることでナノゲルが崩壊することも確認された。さらには、蛍光スペクトル測定により蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルランのナノゲル形成に伴い、修飾したフルオレセインとローダミンによるFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)が起こっていることが確認された。様々な温度で蛍光スペクトル測定を行ったところ、温度の上昇に伴いFRETの解消が進行していることも確認され、オリゴ核酸置換多糖に蛍光分子を修飾することでナノゲルの構造挙動を解析しえることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、昨年度より進めてきたナノゲル形成における会合点となるオリゴ核酸の配列設計とオリゴ核酸修飾プルラン合成により得られた、配列中に人工核酸であるBNAを2-4個置換した6merオリゴ核酸置換プルランから成るナノゲルの温度依存的構造変化などの解析を進めるとともに、生体高分子との相互作用について検討を行う予定であったが、ナノゲルとタンパク質や核酸などの生体高分子との相互作用の解析において低濃度でのナノゲルの構造やタンパク質との相互作用をモニターし得る手法が必要であると考えた。その解決策として、高感度で環境に依存して強度やスペクトルが変化する蛍光分子をオリゴ核酸置換プルランに修飾した、蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルランナノゲルの構築を進めることとした。その結果、二種類の蛍光分子を修飾した蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルランからナノゲル構築し得ることが確認され、修飾した蛍光分子の蛍光挙動変化によりナノゲルの構造を解析し得る手法を確立することができた。この蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルランナノゲルを用いることで生体高分子とナノゲルとの相互作用をより高感度に評価すると同時にナノゲルの構造についても情報を得ることが可能となり、ナノゲルと生体高分子との相互作用評価において想定される問題を解決することが出来た。得られた蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルランの特性についての検討も進めており、相対的な研究計画自体の進行度合いとしては概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度からは2019年度に開発した蛍光分子修飾オリゴ核酸置換プルランナノゲルと生体高分子(タンパク質、核酸)との相互作用について検討を行う。モデルタンパク質としては等電点の異なるタンパク質および酵素を選択して評価する。ナノゲルとタンパク質や核酸との相互作用の検討においてはナノゲルおよびタンパク質、核酸の構造変化にも着目し解析を行う。相互作用の検討は、蛍光分光計、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動法、蛍光相関分光解析装置(FCS)、円二色性分散計(CD)等を適宜用いて行う。また、温度変化条件でのオリゴ核酸置換プルランナノゲルとタンパク質、核酸の相互作用についても検討を行い、温度応答性微粒子としての機能についても評価する。オリゴ核酸置換プルランナノゲルとの相互作用とタンパク質機能との相関については酵素をモデルタンパク質としてその酵素活性を指標として核酸クリップナノゲルのシャペロン機能を評価する。さらにはタンパク質へのオリゴ核酸修飾やオリゴ核酸側の分子設計を進め、オリゴ核酸の配列特異的な相互作用を介した核酸クリップナノゲルとタンパク質の複合体形成と機能解析も進めてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究の進捗状況に伴い予定していた実験を変更したため、それに伴うバイオ試薬類の購入に相当する額が次年度使用額として生じた。次年度の実験計画に伴い、本来購入予定であったバイオ試薬類を購入する予定であり、次年度使用額をそれに当てる。
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