申請者がこれまでに研究を進めてきたオリゴ核酸置換多糖ナノゲル(核酸クリップナノゲル)のさらなる機能化とその基礎物性の解析および生体高分子との相互作用について基礎的な知見を得るとともに、生体高分子の構造、機能を制御し得る核酸クリップナノゲルの構築を進める。2021年度は、新型コロナウィルスの流行に伴い研究計画が遅延したため研究期間を1年延長した最終年度であった。2020年度は分子設計を変更し、架橋型人工核酸としてLNAを導入したオリゴ核酸置換多糖の合成を確立した。本年度はこのオリゴ核酸置換多糖から成るオリゴ核酸置換多糖ナノゲル(核酸クリップナノゲル)とタンパク質やDNAとの相互作用について検討を進めるとともに、応用に向けた基礎的な評価を行った。まず、オリゴ核酸置換多糖ナノゲルとタンパク質との相互作用を検討した。温和な条件でオリゴ核酸置換多糖ナノゲルとタンパク質の相互作用をHPLCで評価したがナノゲルとの複合体形成などの相互作用は確認されなかった。加熱や変性剤共存条件での相互作用評価はナノゲル構造が維持できないため行えなかった。次に、DNAとの相互作用の検討には、免疫賦活化分子として用いられている20merのDNAであるCpGの末端にオリゴ核酸置換多糖ナノゲルのオリゴ核酸配列と相補的な配列を付加したものを用いた。種々の条件でナノゲルとCpGを混合し、ナノゲルとの複合化効率を調べたところ、ナノゲル比率やナノゲル会合点であるオリゴ核酸におけるLNA置換量を増加させることで90%以上のCpGを複合化し得ることが明らかとなった。このCpG複合化ナノゲルと細胞との相互作用についても検討を行い、ナノゲルと複合化することでCpGを効率よく細胞に取り込ませ得ることが確認され、オリゴ核酸置換多糖ナノゲルが核酸デリバリーキャリアとして応用し得ることが明らかとなった。
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