研究課題/領域番号 |
18K12078
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂口 裕和 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (80379172)
|
研究分担者 |
西田 幸二 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40244610)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 自己集合性ペプチドゲル / 人工硝子体 / 安定性 / 薬物徐放 / 薬剤安定性 |
研究実績の概要 |
眼の大部分を占める硝子体は、網膜を押し付けて網膜の剥離を防止する機能(タンポナーデ機能)や、眼内に薬剤が注入された際にその薬剤を眼内に長く滞留させ徐放する機能(徐放機能)などを持っている。その硝子体は、網膜剥離治療の際に除去されることがしばしばある。その際、タンポナーデ機能の回復を図るための硝子体代替物が眼内に注入される。しかし、それらの使用に伴い、術後の長期間のうつ伏せ姿勢強要や合併症などの問題がある。また、この硝子体代替物には、徐放機能は考えられていない。加齢黄斑変性などの治療法として硝子体内薬剤投与が主流となっている現在、徐放機能も非常に重要な機能となっている。そこで、自己集合性ペプチドゲルというユニークな特徴を持つゲルに着目し、我々はその両方の機能を有する新規の硝子体代替物の検討を行った。 昨年度in vitroスクリーニングにより発見したゲルの眼内安定性を向上させる複数の添加物を組み入れたゲルについて、in vivoにおいて、術後6ヵ月の長期安全性とその添加物の効果を確認した。 一方、眼内でのゲルの薬剤徐放性については、昨年度in vitroで徐放性が確認された加齢黄斑変性症治療薬アフリベルセプトを用い、in vivoにおける同薬剤に対するゲルの徐放性を評価し、1年間長期に薬剤が徐放されることが確認された。加えて、自己集合性ペプチドゲルからの薬剤徐放について、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプトの徐放挙動を比較することにより、その徐放メカニズムを解明しつつある。さらに、自己集合性ペプチドゲルに1か月包埋されたアフリベルセプトに、細胞遊走抑制効果、管腔形成抑制効果を有することが確認された。本効果と昨年度確認した細胞増殖抑制効果の確認から、自己集合性ペプチドゲルは、1か月間包埋したアフリベルセプトの薬効を不活化することはないことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型感染症への対応のため、今年度予定していた薬剤徐放効果を確認する試験に遅れが出ている。ただし、薬物徐放のメカニズム解明など、予定以上の成果も出ており、全体としては概ね順調であるとした。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度実施することができなかった、動物を用いた薬物徐放効果の検証を実施する。また、引き続き、最適なゲル組成の検討、さらには徐放メカニズムの解明も継続実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた試験を一部本年度で実施することができなかった。その一部の未実施により、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、今期一部未実施の試験のために使用する。
|