研究課題/領域番号 |
18K12081
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
麓 伸太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (70380988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遺伝子・核酸工学材料 / 遺伝子導入法 / 遺伝子導入機構 / 組織中空間分布 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、新規遺伝子導入ベクターとしてプラスミドDNA搭載脂質・炭酸カルシウムハイブリッドナノ粒子を設計している。この粒子は、エンドソーム酸性下炭酸カルシウムが崩壊し、効率的にプラスミドDNAを細胞質に放出するようにデザインされている。これまでに、プラスミドDNAをエタノール相に分散する技術を開発したところ、エタノール相に塩化カルシウムと脂質、プラスミドDNAを分散し、水相にPEG修飾脂質と炭酸ナトリウムを溶解した後、これら2液を混合することで、ワンステップの操作によりナノ粒子を得ることに成功し、ヒト肝癌細胞株HepG2において市販の遺伝子導入試薬であるLipofectamine3000(LFN3000)と同等の高い導入効率を示すことが明らかになっている。このような複雑なナノ粒子を簡便に再現良く調製できるようになったが、粒子径が200 nm程度と大きく、標的である癌への送達効率に問題があることが想定された。そこで2019年度は、ナノ粒子の調製条件の最適化を行った。塩化カルシウムと炭酸ナトリウムを入れる相を逆にして、脂質濃度を濃くしたところ、直径100 nm程度の小さなナノ粒子を得ることができた。遺伝子導入効率は脂質組成に依存し、コレステロール含量が高い方が高い遺伝子導入効率が得られた。ガラクトース修飾コレステロールを用いたところ、さらに遺伝子導入効率が高まった。2020年度は、コロナウイルスの影響が想定されるが、可能であれば動物実験を行っていきたい。 ナノ粒子の評価系として組織透明化試薬を用いた組織中空間分布評価系Seebestを開発している。Seebestによって、直径200 nmと60 nmのリポソームの肝臓中空間分布の違いを評価することが可能で、粒子径が小さければ肝実質に到達することが可視化できた。このSeebestを活用して、ナノ粒子の評価を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験を行うにあたり、ナノ粒子の粒子径が大きいという問題があったが、調製条件最適化により、十分小さなナノ粒子を得ることができた。また、リポソームをモデルとして、粒子径により組織中空間分布が異なることも明らかにできるようになった。最終年度までに動物実験による遺伝子導入効率の評価、空間分布評価を終える目途が立ったものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、コロナウイルスの影響はあるものの、in vivoにおける遺伝子導入効率および組織中空間分布評価を行いたい。少なくとも最終年度終了時には、動物実験を終える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に消耗品を使用したため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額について、今年度、動物実験を行うにあたり必要なマウス、プラスミドDNA精製キットなどの購入に充てる予定である。 引き続き、効率的な使用に努めたい。
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