研究課題/領域番号 |
18K12083
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
松村 一成 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10348899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リン脂質 / 多孔質膜 / リポソーム / 脂質二分子膜 / 人工脂質膜 |
研究実績の概要 |
生体膜の研究・利用のために人工のリン脂質二重膜を基板に支持させる様々な手法が提案されているが、生体組織のような多細胞型の脂質膜を作成するような手法は未だ開発されていない。そこで本研究ではハニカム状多孔質膜を支持体とすることで機械的安定性に優れた多細胞型の人工生体膜組織を作成した。ハニカム状多孔質高分子膜をBreath-Figure法で自己組織的に作成し、さらに無電解銀電鋳を行ってハニカム状金属骨格を作成した。その金属多孔質膜を支持体として脂質膜を作成した。脂質膜の展開法は従来の平面脂質膜や脂質膜小胞(リポソーム)の作製方法と同様な手法(ペインティング法、自然膨潤法、エレクトロフォーメーション法)を当初用いていたが、今年度新たに溶媒置換法を用いて目的の脂質膜構造を多孔質膜内部に形成させることに成功した。従来法では孔内に二分子膜小胞を形成せず過剰な脂質分子が残存する部位が多く観察されていたが、本法は簡便でありながら理想的な脂質膜構造を形成する効率が高いことが認められる。その構造はレーザー共焦点蛍光顕微鏡で脂質膜・内包水溶液のそれぞれに導入した蛍光色素を観察することで確認した。また、形成した脂質膜に対して膜融合性リポソームが融合することも確認し、支持体のないリポソームと同様の膜流動性を持っていることが示された。本年度はさらに高分子ビーズの二次元結晶を鋳型として多孔質体を作成し、それを支持体として脂質膜を作成・観察する研究も実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要な微小操作を行うマイクロマニピュレータがサポート等の問題で当初の計画ほど運用が出来なかった。他に特に研究進捗に支障が出るような問題は起きていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立した溶媒置換法の条件最適化を中心に各種実験方法を更に進展させる。また、脂質膜間の物質移動の可視化については新しい蛍光プローブ系を導入してより洗練したものとする。実験機器についてもマニピュレータの更新なども検討して研究を推進させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マニピュレータなどの実験装置の運用状況を鑑みて、次年度に新規装置購入を行う事としたため。
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