研究課題
全身の薬物動態である吸収(A)、分布(D)、代謝(M)と排泄(E)(ADME)を評価できる培養系、即ち人体の臓器を培養皿に再現した「生体/臓器チップ」の実現には、培養皿上でADMEの役割を担う細胞が、生体内の環境に近い薬剤反応性を発揮できるように、それぞれの細胞種に適した2次元(2D)単層、あるいは3次元(3D)組織の形態で維持された培養モデルが必要と考えられるが、これを実現し得る細胞の操作技術はほとんど開発されていなかった。本課題においては、これまでに① 我々の開発した接着細胞の自己凝集化誘導技術(CAT)と任意形状に加工したシリコーン製の培養部屋を用いることで、血管内皮細胞、間葉系幹細胞、骨格筋細胞や軟骨細胞などを培養部屋内に播種して静置培養するだけで、細胞種の由来組織の形状に合わせた3D組織体(毛細血管、骨格筋様のファイバー形状や気管軟骨様のリング形状など)や2D細胞単層と3D組織体が連結した構造体などを培養部屋内に定点固定した状態で作製することに成功した。② CATを用いて作製した3D組織体の薬効・毒性試験のためのシリコーン製の微細加工培養部屋、及び組織収縮力計測センサを作製した。③ 毛細血管様組織体を例として、血管毒性薬を添加することで内皮細胞層の崩壊や毛細血管構造の縮退を確認するなど、CATを用いて作製した3D組織体の培養評価モデルとしての有効性を示すことができた。令和4年度は、CATを用いて異なる2種以上の3D組織体を単一の培養部屋内にて同時に作製できることを確かめた。一方で、2種以上の3D組織体を細胞機能を維持した状態で培養することが困難であることが分かり、薬効・毒性評価として細胞機能や組織構造変化を計測するには至らなかった。今後は、複数種の組織体を同一培養部屋内にて細胞機能を維持した状態で培養することが可能な培養システムの開発が必要である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
Scientific Reports
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