研究課題/領域番号 |
18K12092
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (20399398)
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研究分担者 |
海老澤 瑞枝 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部光音技術グループ, 主任研究員 (00510893)
畑山 博哉 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 副主任研究員 (80614552)
近藤 英司 北海道大学, 大学病院, 教授 (60374724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工腱 / 生体吸収性 / リモデリング / 細胞浸潤 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究では、1)2018年度に開発した配向コラーゲン線維人工腱のウサギ膝蓋腱への埋植実験、2)およびその結果を踏まえた改良人工腱の開発を行った。 1)人工腱のウサギ膝蓋腱への埋植 以下の3種類の人工腱を作製した: 総断面積を統一した①弱架橋/太径fiber×6本組紐、②強架橋/太径fiber×6本組紐、および③強架橋/細径fiber×36本。これらの人工腱をウサギ膝蓋腱へ埋植し、3週後に摘出して組織解析を行った。Fiber間への組織浸潤を認めたが、fiberの組紐が緩み、かつ各fiberはほとんど吸収されず細胞浸潤も受けなかったため、生体腱で生じるfiber微小間隙への細胞浸潤とは非なる現象であった。今回採用した熱処理(130℃、12h)で生じる架橋密度が、生分解活性が低い腱内では過剰な安定性をfiberに与えたことが示唆された。生体腱で生じるfiber微小間隙への細胞浸潤を生じさせるためには、各fiberの内径が太すぎることも明らかになった。 2)改良人工腱の開発 生体腱で生じるfiber微小間隙を付与するため、最小でも直径が100umであるFiberを組紐化する作製法を改め、帯状コラーゲンゲルから作製した厚み20umの乾燥シートに細胞浸潤のためのスリットを付与し、それをコラーゲン/GAG(コンドロイチン硫酸)層と複合化してロールアップする方法を開発した。厚さ20umの矩形断面を持つファイバーが細胞浸潤性の間隙をもって束化し、その間隙にGAGが充填された人工腱fascicleが創製された。湿潤状態での引張弾性率および破断強度はそれぞれ2.5 MPaおよび0.5 MPaであった。このコラーゲン/GAG複合人工腱を量産中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者が開発した配向コラーゲン線維ゲルの連続成型技術では、作製可能なfiberの最小直径が100umであることがわかり、生体腱のfiber径である20umに近づけることが困難であった。そこで人工腱の創製法を変更したため若干の計画遅延を生じた。しかし、2019年度にロールアップ方式による改良人工腱の開発を終えたため、生体腱と同様にリモデリングを受けるコラーゲン/GAG複合人工腱のin vivo評価を2020年度に完了し、計画通り本研究を終えることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
・基本的には計画通りに進める ・改良人工腱が仮にリモデリングを受けなかった場合に備え、細胞浸潤のための微小間隙を有する人工腱の開発も2019年度に完了しているため、それを用いる。一方向性凍結法を用いて、直径およそ5umのfiberが束化した人工コラーゲンfascicleの創製に成功した。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による3月の東京→北海道出張の取り止めにより旅費の使用額が予定よりも少なくなった。また、人工腱に課題が生じたため量産化が2019年から2020年度にずれ込んだため、予定していた原料コラーゲンの購入を見送ったため差額が生じた。2020年6月からの研究業務再開により、コラーゲンを購入して予算を執行する予定である。また、出張についても2020年6月から解禁となったため執行可能である。
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