研究課題/領域番号 |
18K12093
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研究機関 | 富山県薬事総合研究開発センター |
研究代表者 |
小木曽 英夫 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 副主幹研究員 (30466734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞膜 / がん細胞 / DDS / ナノ粒子製剤 |
研究実績の概要 |
「自家がん細胞を培養し、がん細胞から形質膜を分離したのち小胞を形成させ、これに抗がん剤を封入する」という当初の計画を変更して2年目は、がん細胞の形質膜断片を調製し、これを抗がん剤ナノ粒子にコートする方法を検討した。 1.細胞膜断片の調製方法の見直し:これまでは単層培養細胞から、シリカビーズ法を用いて形質膜を調製していたが、これでは細胞接着面に相当する膜断片の収率が悪いと判断し、細胞を一度スフェロイド化して培養後、分散させてから同様にシリカビーズ法で形質膜を調製する方法に変更した。これにより細胞接着面の回収収率の高い形質膜が得ることが期待できた。 2.抗がん剤ナノ粒子製剤の調製:脂溶性抗がん剤をナノ粒子化する方法として、はじめにオイルエマルジョン製剤を検討した。抗がん剤の封入量が最大になるように脂質組成を最適化し、100nm以下の粒子として調製することができた。しかしながらこの粒子を培養細胞の培地に添加したとき、細胞内への取り込み効率を測定した結果から判断すると、希釈されたナノエマルジョン粒子は培地中のアルブミンとの相互作用などにより、添加後すぐに崩壊してしまうことが示唆された。本研究の目的は、血中で安定なナノ粒子製剤であるため、アルブミン共存下希薄溶液中でも安定でなければならない。この結果を受けて、次の方法として常温固体エマルション製剤を検討したが、粒子はやや安定化したものの、必要十分な安定性を得ることはできなかった。ナノ粒子化については、さらに別の方法を検討する必要があることがわかった。 3.抗がん剤ナノ粒子への細胞膜断片のコート化:細胞膜の細胞質側のチオール基が還元状態であることを利用して、ナノ粒子表面にチオール基を導入し、両者の間で酸化的ジスルフィド結合を形成させることにより、細胞膜断片をナノ粒子にコート化する方法を検討した。その結果この方法が有効であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要「1」と「3」は概ね達成できたものの、「2」については方法を確立することができず、当初予定していた培養細胞レベルでの効果の検証まで至らなかった。比較的高濃度のアルブミン溶液中に希釈されたオイルエマルションは、当初の予想に反して安定性に欠け、その構造が崩壊してしまうことがわかった。克服すべき課題が判明したものの、これまでに有効な解決方法を見出すことができなかったことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
アルブミン共存下、希釈溶液中でも安定なナノ粒子を作製する方法を確立することが最大の課題である。ナノ粒子表面への細胞膜のコート化によって粒子が安定化する可能性も考えられるため、粒子の作製方法と細胞膜コート化方法を総合的に検討する。その結果、安定なコート化粒子が作製できたのちは、早急に培養細胞レベルのアッセイを用いて、自家がんに対する選択的作用があるか否かを検証する。選択的作用が見いだせたのちは、動物レベルでの検証実験へ展開させるために、共同研究等の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画の若干の遅れに対し、一部予定した実験を行うことができなかったため、使用額が若干少なくなった。次年度には遅れた計画分の実験を含めて、当初の計画を遂行する。
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