研究課題/領域番号 |
18K12108
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
舛形 尚 香川大学, 医学部附属病院, 教授 (70263910)
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研究分担者 |
千田 彰一 香川大学, 医学部, 名誉教授 (30145049)
南野 哲男 香川大学, 医学部, 教授 (30379234)
村上 和司 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (60575207)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フレイル / 高血圧 / 左室肥大 / 左室拡張障害 |
研究実績の概要 |
外来通院中の安定した高血圧患者を対象に採血、身体計測を行い、本研究対象となるフレイル患者を選定し、患者背景に関するデータを集積している。 外来に薬物治療のため通院中の高血圧患者を、健常、プレフレイル、フレイルの3群に分類し、臥位心臓超音波検査を検査を行い、左室肥大と左室拡張障害について比較を行った。対象は高血圧治療中の安定した65歳以上の患者35例であり、 J-Cardiovascular Health Study診断基準の5項目に該当する個数によって、0個を健常群12例(N)、1-2個をプレフレイル群13例(PF)、3個以上をフレイル群10例(F)に分類した。年齢はN:71±3歳、PF:80±7歳、F:85±5歳とPFとFではNより有意に高値であった。左室肥大の指標は心エコー図から求めた左室心筋重量係数で比較したが、3群に有意差は認められなかった。左室拡張能障害は臥位心臓超音波検査法の左室流入血流速波形(E波高、A波高、E/A比)で比較したが3群に有意差は認めなかった。しかし心エコー図の僧帽弁弁輪部移動速度e’は、N:5.9±0.9cm/s、PF:5.1±1.2cm/s、F:3.9±0.5cm/sの順に低下が認められ、F群はN群やPF群より有意に小であった。外来高血圧患者のフレイル群は、健常群やプレフレイル群に比較して左室肥大は認めなかったが、左室拡張能障害が進行していることが示された。 今後は心臓超音波検査の指標としてe’などの組織ドプラ法の指標を加味して研究を進める必要性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外来通院中の高血圧患者を選定し、研究対象として健常群、プレフレイル、フレイルの3群に分類して心臓超音波検査法などのデータを集積できている。現在はまだ症例数は少ないが、統計解析結果では健常群、プレフレイル群、フレイル群の間で有意差が認められており、ある程度フレイル患者の心機能を明らかにできていると考えるため。
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今後の研究の推進方策 |
対象となるフレイルの患者数を増やし、データ集積を進める。薬物療法、食餌・運動療法を行ったフレイル患者の心機能を心臓超音波検査で4年間経過観察し、心機能変化に及ぼす因子の検討を行う。今後は臥位だけでなく座位心臓超音波検査法でのデータ集積を進め、臥位心臓超音波検査法との比較を行い、座位心臓超音波検査法の転倒防止、診断の遅れ防止など医療安全面での有用性を評価する。さらに、今後は心臓超音波検査法のデータ集積のみでなく、以下のデータ集積を併せて行い、心臓超音波検査法データと比較する。 (1)筋肉量、認知機能、栄養との比較 筋肉量の指標として、電気インピーダンス法、四肢周囲径、大腿前面筋厚を計測する。認知機能はミニメンタルステート検査で測定し、栄養は血清アルブミン値などの血液検査で評価し、心臓超音波検査指標との関係を検討する。 (2)動脈硬化度、心不全、腎機能、酸化ストレスのマーカーとの関係 血圧脈波計測により動脈硬化度を評価する。血液検査からBNP、クレアチニン、高感度CRP、8-OHdGを測定し、尿検査から尿中アルブミン,尿中8-OHdGの測定を行う。動脈硬化度、心不全、酸化ストレス、腎機能障害と心臓超音波検査指標との関連性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象患者のデータ集積のための検査費用が予想よりも安価だったため本年度の使用額は少額ととなった。次年度以降には集積したデータ解析のための物品費、研究に関する資料収集のための学会参加、研究成果の学会発表と論文発表のための費用として使用する予定である。
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