研究課題
糖尿病治療薬であるインスリンを、本研究課題で開発した烏口型マイクロニードル(烏口型MN)アレイに塗布し、糖尿病ラットを用いて治療効果を検討した。烏口型MNは糖尿病ラットの血糖値を有意に下げた。しかしMN適用時間による治療効果に差が見られず、この原因はMNに塗布したインスリンの溶解性の低さであると予想した。そこで塗布ゲルの基材をグルコース系高分子に変更した。またMNの皮膚適用時間を12時間まで延長したところ、実験時間中の血糖値を初期濃度の50%程度に維持できた。したがって烏口型MNを用いることで、1日2回の投与で糖尿病患者の血糖値管理が可能であることが分った。昨年度、FITC標識デキストラン(FITC-D、分子量20万)に電場を適用しても、皮膚透過に要する時間は10時間程度であり、電場による透過促進効果のon-off時間制御が困難であることを示した。そこで今年度は、高分子化合物の皮膚透過促進効果の時間制御の可能性を継続して検討した。FITC-D皮膚透過量に与える皮膚含水量の影響を検討するために、皮膚上にゲルのみを塗布した前処理実験を行った。その結果、FITC-Dの皮膚透過に要する時間は、皮膚内の含水量に影響を受けないことがわかった。次に前処理した皮膚に電場を適用すると、FITC-Dの皮膚透過量の増大、皮膚透過に要する時間の短縮が起き、on制御の可能性が示唆された。しかしFITC-Dの皮膚透過量は時間とともに増加を続けたため、高分子化合物の電場による皮膚透過のoff制御は、さらに検討が必要であった。烏口型MNと電場の併用による高分子化合物の皮膚透過促進の可能性を検討した。烏口型MNを皮膚に適用し、適用部位にFITC-Dを塗布した。FITC-Dの皮膚透過促進効果は、分子量が大きくなるほど大きくなることが分った。さらに電場を併用したが、期待した促進効果は得られなかった。
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