研究課題/領域番号 |
18K12111
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
福本 昌弘 高知工科大学, 情報学群, 教授 (70299387)
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研究分担者 |
橋本 浩二 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (80305309)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 秘密分散法 / 部分復元 / 医療情報 |
研究実績の概要 |
医療情報には喪失を防ぐ他にも、平時の地域医療連携のための情報共有や災害時の診療への利用などの要求がある。これらを実現するためには、患者の情報の検索と診療に必要となる情報のみを閲覧できることが必須となる。これまで、秘密分散法により分散された秘密情報(シェア)から必要な情報を検索するためには、すべてのシェアを復元してから検索する必要があり、膨大な計算量や計算時間を要することが問題であった。これに対し、部分復元可能な秘密分散法が数学的に実現可能なことを既に示していたが、さらに秘密分散する前のデータをより小さなサイズに分割することによって剰余演算の法(拡大次数)を小さくできることから、復元に要する時間を短縮できることを明らかにしている。また、氏名、生年月日等の個人を特定するためのデータをもとの情報に復元することなくシェアを比較するのみで検索を実現するための秘匿計算法を導いており、復元してから検索する方法に比べて検索時間を大幅に短縮できることを計算機シミュレーションにより確認している。ただし、シェアとの比較のみでの検索を実現するために安全性が犠牲になっているため、安全性の評価と医療情報に求められる安全性の確保が必要になる。これらのシミュレーションでは、高知医療センターで用いられている電子カルテシステムから生成される標準ス化トレージSS-MIX2(厚生労働省電子的診療情報交換推進事業)のダミーデータを用いているため、実際に医療の現場での活用も容易である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに数学的な実現可能性を示していた部分復元可能な秘密分散法を用いた電子カルテのバックアップで実現できていなかった、必要な情報のみを閲覧するための検索方法と復元のリアルタイム性の確保について検討している。まず、復元のリアルタイム性については、情報をより小さなサイズに分割することによって剰余演算の法(拡大次数)を小さくでき、復元に要する計算量を削減している。また、患者の情報の検索については、復元することなくシェアの比較のみでの検索が可能であることを明らかにしている。これらについては、計算機シミュレーションにより有効性を確認している。これらについては、当初の計画通りに進捗している。 なお、当初は研究協力者による実装のための人件費・謝金の支出を見込んでいたが、研鑽機シミュレーションのみで有効性の検証ができたため支出されなかった。また、設備備品費として仮想サーバと携帯型コンピュータを計上していたが、予算よりも安価で購入できたため、これらの金額を繰り越している。
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今後の研究の推進方策 |
復元のリアルタイム性を確保するため、並列処理など他の手法を組み合わせることで、さらなる高速化を実現する。 シェアとの比較のみでの検索を実現するために安全性が犠牲になっており医療情報に求められる安全性を確保するために、数学的、システム的、両面からの安全性の検証と改善法を明らかにする。 医療情報を医師および医療機関がどのように扱うかについては、研究協力者である高知医療センター 総合診療科長 澤田務医師、医療情報センター 北村和之主事の指導を仰ぐ。医療機関からの評価として、高知医療情報通信技術連絡協議会の会員にも実証実験に参加してもらい、評価結果をフィードバックする。 秘密分散アルゴリズムを用いた分散保管・部分復元システムを実装し、テストベッドネットワークJGN、学術情報ネットワークSINET5等を介して高知と岩手に設置した仮想サーバおよびJGN上の仮想サーバ・ストレージにより、広域に分散された情報から患者の情報を検索し、必要な診療情報を安全に復元・伝送できることを実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は研究協力者による実装のための人件費・謝金の支出を見込んでいたが、研鑽機シミュレーションのみで有効性の検証ができたため支出されなかった。また、設備備品費として仮想サーバと携帯型コンピュータを計上していたが、予算よりも安価で購入できたため繰り越しが生じた。 この差額により、翌年度の実装および実証実験のための人件費・謝金を10万円程度増額し、計算機シミュレーション用の仮想サーバのための設備備品費を10万5千円程度増額して執行する。
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