研究課題/領域番号 |
18K12112
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 正一 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (90803255)
|
研究分担者 |
市原 清志 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授(特命) (10144495)
山下 哲平 滋慶医療科学大学院大学, 医療管理学研究科, 講師 (50617420)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | クロマトグラフィー / フローサイトメトリー法 / フィッティング関数 / クラスター解析 / シミュレーションプログラム |
研究実績の概要 |
クロマトグラフィー(CG)やフローサイトメトリー(FC)を用いた分離分析では、複数の成分の重なりが常に問題となる。我々はその問題に対し、2018年度の実験で高圧液体クロマトグラム(HPLC)を使って、重なりのあるクロマトグラム研究に適した薬物としてクレアチニンとカフェインを使用し、移動相として酢酸エチル60%溶液を使用した場合が、重なりによる影響を説明するに適していることを実証した。 2019年度には正規分布を仮定したシミュレーションや実際の成分量評価のみでも、現在行われている谷値を用いた成分量では正確に定量分析が行えないことを明確にすることができたが、現実場面における精度の高い分析技術とするため、本研究のテーマである高精度な定量分析プログラム開発では、機械学習を行い各成分のクロマトグラムに合致したフィッティング関数の検索を行った。82種類のフィッティング関数を評価するプログラムを作成し、一致度の高いフィッティング関数の検出方法の確立に努めた。また、新たにHPLCカラムを長期に使用することで波形に変化が現れることが分かったことから、再度この2薬剤の濃度バランス、HPLCカラムの新旧による影響によってフィッティング関数が変化することも明らかとなった。機器の状況によって混合分布の制御方法を調整する必要があることが分かり、新たな課題とその検討に必要性が生じた。 2020年度には、課題の解決策として、これまで検出された成分分布そのものに対してフィッティング関数を当てはめたが、Cox-Box法による変数変換を実施して、左右対称の分布に変換後にフィッティング関数を求める手法で検索したところ、最も一致する分布がt分布であることが判明した。この方法によって、カラムの新旧による影響を減少させることが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2018年度では、正規分布を仮定した重なりあう成分に対して、シミュレーションプログラムを作成し、現在一般的に成分分離法として行われている谷値法を用いた分析方法の問題点を明確にした。また、実際に各種の薬品を用いて成分が重なり合う状況を作り出すパターンについてHPLCを用いて、相当数の分析を実施し、クレアチニンとカフェインを用いることで理想的な重合パターンが作成できることを突き止めた。また、正規分布を仮定した重合した1次元分析プログラムを開発し、谷値法では、成分量が大きく異なる場合には大きな誤差が生ずることを証明した。しかし、実際のクロマトグラムから得られた重合する成分分析データの内、クレアチニンのクロマトグラムが左右非対称のものであったことから、考案した正規分布を仮定としたプログラムでは最適な分析性能を得るのが困難である事がわかった。そこで2019年度には、単純な正規分布を仮定したプログラムではなく、非対称なクロマトグラムにも対応できる汎用的なプログラム開発を到達目標として進め、82種類のフィッティング関数とCox-Box関数によるフィッティング性能を評価するプログラムを作成し、クレアチニンとカフェインの最適なフィッティング関数の検索を行った。問題として、新たにHPLCカラムを長期に使用することで波形に変化が現れることが分かったことから、データの取り直し作業に時間を要した。また、2020年度には本来であれば2・3次元データの重なりのあるデータとして、フローサイトメトリー法を利用した白血球分画についてデータ収集を行い、この中で発生する混合分布に対しての検討を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、臨床検査データの収集を行うことができないでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
カラムの劣化による波形の変化に対して、Cox-Box法による変数変換を利用してデータ分布を特定することが明らかになったことから、2次元の混合分布であるフローサイトメトリー法で計測されている白血球分画についてこのアルゴリズムが適用可能であるかを検証する。特に炎症時に好中球が増加するが、このときに新たな細胞集団が発生し、混合分布の状態になることが分かってきたので、この正常細胞群と炎症細胞群の混合状態について解析作業を行っていく方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大により、緊急事態宣言が東京や千葉で発令され、全国に及んだことから、多くの学会がWeb開催となり、本来であれば開催地への旅費が発生していたものがなくなったためと、研究活動そのものがコロナの影響で制限され、遅延していることから、論文作成時のネイティブチェック等の費用の発生がなかったために生じた。 今後の使用計画としては、2次元データの混合分布解析を実施するに当たりフローサイトメトリーによる解析のための試薬費用、フローサイトメトリー解析プログラム購入費用および学会発表と論文作成に当てる計画である。
|