本研究は、非接触で動脈血酸素飽和度を実用レベルでの計測を実現し、そのシステムを評価する事を目的として行われた。従来の計測方法である透過型パルスオキシメーターは、センサーを装着する必要があり、感染症の拡大など、衛生面の問題もある。本研究では、非接触で計測することで、これらの問題を解決することを目指した。 今年度は、昨年度までに開発されたコールドミラー(可視光を反射し、赤外光を透過させるミラー)を用いた計測装置を用いて、評価実験と改良に取り組みました。特に、2台のモノクロカメラを使用して装置を再構築し、計測実験を行いました。コールドミラーで分光した光を2台のカメラに入力し、脈波に含まれる可視光と赤外光の信号を分離することでそれぞれ波長において脈波の安定した計測を実現した。開発した試作機と同時に従来の透過型パルスオキシメーターを装着し、息を止める計測実験を行った。この実験では、酸素飽和度の低下を記録し、透過型パルスオキシメーターによる計測結果と開発した試作機による計測結果を比較した。計測実験の結果、新たに開発した装置を使用しても非接触で脈波を捉え、血中酸素飽和度の変化を捉えることができた。 実験の結果から、コールドミラーを使用して分光を行うことがカメラを利用した計測においても有益であるという事が確認された。これにより、本研究の成果として非接触で動脈血酸素飽和度を計測する新しい方法が開発された。本研究で開発された装置は、今後、医療現場での臨床応用や健康管理にも活用されていくことが期待される。
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