研究課題/領域番号 |
18K12116
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
金 大永 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (60461860)
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研究分担者 |
小林 英津子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20345268)
高野 文之 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (30464770)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外科支援デバイス / 鉗子操作誘導 / 把持力計測 / 干渉装置 / ネガティブフィードバック |
研究実績の概要 |
本研究では、臓器の力学特性と術者の操作法との相関関係をデータベース化し、デバイスが正しい操作法を学習することにより、「装着型の計測デバイスを用いて臓器の力学特性を推算し、術者側にその情報を提供、安全な操作へ誘導する」ことを目的とする。具体的には、①一般材料試験から得られた臓器の力学特性と鉗子など治療機器から得られる特性の関係を明確にする、②市販の鉗子にも応用可能な計測・表示・誘導システムを構築する、③機械学習により、適切な鉗子の位置と力を入れる方向、把持力を誘導する。3年目では先行研究の成果に基づいて、改良・修正を行った。 ①計測・干渉システム:開発したPCI用バルーンを用いた干渉装置の改良を行い、製作したスマートトロッカを干渉装置と合わせ、in vivo実験にてその有用性を検討した。干渉装置の問題となったのは、その干渉力であり、先行研究では1N程度に留まった。装置の重さは従来の100gfのまま、力の増幅を図る機構を取り組み、干渉力を3倍まで大きくすることに成功した。 ②表示・誘導システム:腹腔鏡下手術において手術作業の重要な役割を占めるカウンタートラクションに注目し、操作力表示システムに必要な、鉗子位置姿勢計測についての研究を行った。3Dレンダリングソフトウェアを用いて術中の内視鏡画像を模擬した大量のデータセットを生成し、機械学習により、鉗子の軸回り方向の姿勢も含めた、鉗子の位置姿勢計測を行った。その結果、位置計測誤差 2.77±2.69 mm、 長軸方向姿勢誤差 2.26±1.66 °、軸回り回転姿勢誤差12.1±28.4°の結果を得た。以上の結果より、腹腔鏡下手術における、力の高精度計測の実現可能性を示した。 ③機械学習:我々が検討した手法は教師あり学習であり、そのためエキスパートによる操作のデータを教師データとして収集する為、簡単な動作とin vivoでの操作データを集めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①計測・干渉システム:主に干渉機構の改良を行った。干渉力を機構的に増幅することができた。また、鉗子の進行方向計測部と干渉機構を統合してのin vivo実験にてその有用性を確認した。 ②表示・誘導システム:前年度の試みであった、機械学習による表示・誘導システムの改良を行った。そのデータを多く作るため、3Dレンダリングソフトウェアを用いて術中の内視鏡画像を模擬した大量のデータセットを生成することが可能であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、計測・干渉システムとの統合が進んでいない。 ③機械学習:多くのエキスパートから、機械学習に必要なデータを取得することが非常に困難であり、新たな課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
計測・干渉システムとの統合を令和3年度内に完成し、in vivoでの確認を行う必要がある。特に干渉装置の有用性に関しては、臓器の弾性を計測したデータを、どのように制御に活用できているか、その定量的評価実験がまだ残っている為、最優先でその評価実験を行う。 機械学習の手法は、教師あり学習と教師なし学習に大別される。人工神経回路(ニューラルネットワーク)における誤差逆伝搬法を用いた深層学習(ディープラーニング)[T. M. Mitchell. Machine Learning, McGrae-Hill 1997]を機械学習に用いることを当初、我々は検討したが、この手法は教師あり学習であり、そのためエキスパートによる操作のデータを教師データとして多く収集する必要がある。一方、強化学習[R. S. Sutton and A. G. Barto. Reinforcement Learning. MIT Press 1998]は、結果に対する評価のみが与えられる中で、装置が試行を繰り返すことで学習が進められる。この手法は教師なし学習に分類される。例として鉗子による把持に強化学習を応用すると、生体組織の損傷の有無と動作時間の速さを評価に用いることで、前者のようなエキスパートの操作データを必要としないことに、我々は着目した。強化学習のソフトウェア評価を目的に、パラメータにノイズを加えたバネ・ダンパーモデルを生体組織のモデルに用いたコンピュータ・シミュレーション環境を制作している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で出来なかった合同実験や、交流、また、学会発表が計画通りに行えなかった。 出来なかった干渉力の定量評価実験に必要な材料や計測機器の購入、また、部品の外注に一部を使用する。 また、システム統合後のin vivo実験と学会発表や論文作成に使用する。
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