研究課題
本課題では、肝がんへの進行性が注目されている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する学術的アプローチを次の2つの観点から実施している。これらは、(1)NASH部位が特徴的に示す生体組織音速の温度依存特性を利用して、超音波診断装置への搭載を目指したin vivo計測システムを構築し、NASHの鑑別診断の実現可能性を目指す。これを用いて、組織への超音波加温に伴う超音波Bモード画像観測を通じて、観測対象領域と対象組織との対応関係について明確な同定を指向する。(2)世代サイクルが短いメダカを観測対象種に選定し、観測対象のメダカに発生させたNASHに対して、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)を用いた質量分析イメージングによるメタボローム解析を行い、NASHの発症因子の特定を試みる。本研究の学術的独自性は、3カ月というメダカの短いメダカの世代交代を活用し、観測対象種にNASH要因を持つメダカを選定して遺伝因子への影響も観察できる観測系を構築すると同時に、超音波によるNASH診断の可能性を示す発症因子を特定し、これらの相互情報からNASHの本質解明を進める点にある。本年度は、(1)、(2)それぞれについて、実験系を整備し基礎的なデータ収集を行った。その結果、ファントムモデルにおいて、超音波照射に伴う局所音速変化を測定できる実験系を構成し、その音速変化から目的部位の微小な温度変化が測定できることを確認した。また、NASHモデルに適用できるノックアウトメダカ(P53メダカ )を用いて、このメダカの成長に伴うNASH因子について超微量質量分析イメージング装置を用いて肝実質部分の代謝変化の観察を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画である実験系の構築をほぼ完成できた。また超音波照射に伴う温度変化を超音波音速の変化から推定できることも確認できた。さらに、NASH観測に適したp53メダカの飼育体系も確立し、このメダカを用いた観測体制を整備した。これらの成果を当該分野の専門学会誌ならびに国際会議等で発表した。
本研究の学術的独自性である、世代サイクルが3カ月と短いメダカを観測対象種に選定し遺伝因子への影響も観察できる観測系を活用し、NASHに関する幅広い生理情報を獲得する。また、超音波によるNASH診断の可能性を示すと同時に発症因子を特定し、これらの相互情報からNASHの本質解明を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 産業財産権 (1件)
Journal of Medical Ultrasonics
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