非アルコール性脂肪肝炎の超音波による定量診断と超微量質量分析による発生機序の解明

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K12119
• 研究機関: 同志社大学
• 研究代表者: 渡辺 好章 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (60148377)
• 研究分担者: 秋山 いわき 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80192912) ; 池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943) ; 飯島 尋子 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80289066) ; 吉田 憲司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (10572985)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: NASH / メダカ / 胆汁酸 / 腸肝循環 / イメージング質量分析

研究実績の概要

肝がん（HCC）への進行性が注目されている非アルコール性脂肪性肝（NASH）に対する超音波技術の応用展開の可能性についての学術的アプローチを試みた．
初年度の検討結果から，NASHの詳細な検討には，メダカ成魚の一個体全体を対象としたヌクレオチドや胆汁酸の腸肝循環に着目した検討が有効であることが分かった．そこで，メダカ成魚の12μm厚の全身凍結切片を作製し，顕微質量計 iMScope（島津製作所）にてイメージング質量分析を行った．同一組織上で比較可能な肝臓・胆嚢・上部～下部腸官領域で得られたスペクトラムの特徴を多変量解析や機械学習法を応用した画像統計ソフトを用いて特定した．この結果，メダカの主な胆汁酸はC24（TCA）とC27（THCA）であることを見出し、この二つの胆汁酸のメダカ一個体内での分布を可視化することに成功した. またこれらの分布は、おおむね一致して胆汁の腸肝循環を示し, 主成分分析により各消化器官の部位の鑑別を可能とする重要なパラメーターとしてこの二つの胆汁酸が機能していることが示唆された．さらに，メダカ全身イメージング質量分析法のプロトコールを確立し, メダカの胆汁酸を指標としたメダカ胆汁の腸肝循環の可視化に成功した.さらに，胆汁酸と 同時にヌクレオチドやリン脂質などの局在についても観察し，メダカ生体内における胆汁酸の合成・分泌・消化・吸収のプロセスの理解への寄与を目指した．このようにメダカを対象としたイメージング質量分析法を応用することにより多変量解析や機会学習法を用い胆汁酸などのパラメーターを用いて空間的・分子的網羅的解析を行う新たな代謝解析の手法の開発が可能となるとの示唆を得た．
今回の研究手法を用いると，胆汁酸を始めとする胆汁の腸肝循環の網羅的解析が可能となり，メダカ一個体のモデルにおいて 脂肪肝から発がんに向けての分子基盤の解明につながると考えられる．

研究成果

• [雑誌論文] Attenuation imaging based on ultrasound technology for assessment of hepatic steatosis: A comparison with magnetic resonance imaging-determined proton density fat fraction (2020)
  • 著者名/発表者名: 1.Tada Toshifumi, Kumada Takashi, Toyoda Hidenori, Nakamura Sinichiro, Shibata Yusuke, Yasuda S, Watanuki Yutaka, Tsujii Kazuyuki, Fukuda Naoya, Fujioka Mamoru, Takeshima Kenji, Niwa Fumihiko, Ogawa Sadanobu.Hashinokuchi Sinichi, Kataoka Saki, Ichikawa Hironori, Iijima Hiroko.
  • 雑誌名: Hepatology Research 巻: 50 ページ: 1319-1327
  • DOI: 10.1111/hepr.13563
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Nonalcoholic fatty liver disease and nonalcoholic steatohepatitis: new trends and role of ultrasonography (2020)
  • 著者名/発表者名: 2.Tada Toshifumi, Nishimura Takashi, Yoshida Masahiro, Iijima Hiroko
  • 雑誌名: Journal of Medical Ultrasonics 巻: 47 ページ: 511-520
  • DOI: 10.1007/s10396-020-01058-y
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Effect of attenuation correction on backscattering coefficient evaluation of lymphedema, (2020)
  • 著者名/発表者名: Wakana Saito, Masaaki Omura, Shinsuke Akita, Kenji Yoshida, Tadashi Yamaguchi
  • 学会等名: The 41th Symposium on UltraSonic Electronics
  • 国際学会
• [学会発表] Backscattering Analysis for Characterization of lymphedema Dermis and Hypodermis (2020)
  • 著者名/発表者名: Wakana Saito, Masaaki Omura, Shinsuke Akita, Kenji Yoshida, Tadashi Yamaguchi
  • 学会等名: IEEE International, Ultrasonics Symposium
  • 国際学会
• [学会発表] 肝脂肪の評価における超音波減衰法"Attenuation imaging"とMRI-PDFFとの比較・検討.(一般) (2020)
  • 著者名/発表者名: 多田 俊史, 中村 進一郎, 森井 和彦, 豊田 秀徳, 安田 諭, 飯島 尋子, 熊田 卓
  • 学会等名: 第93回学術集会 2020.11 WEB開催
• [学会発表] C型慢性肝炎SVR後のVFMAP scoreによる肝発癌予測と肝硬度の推移 (2020)
  • 著者名/発表者名: 西村 貴士, 榎本 平之, 飯島 尋子
  • 学会等名: 第24回日本肝臓学会大会 2020.11 大阪
• [学会発表] Clinically Significant Portal Hypertension C型肝硬変に対するDAA治療による肝硬度変化の意義.(一般) (2020)
  • 著者名/発表者名: 池田 直人, 西川 浩樹, 岩田 恵典, 榎本 平之, 飯島 尋子
  • 学会等名: 第27回日本門脈圧亢進症学会総会 2020.10 WEB開催
• [学会発表] 食道胃静脈瘤の評価における超音波エラストグラフィーの有用性.(シンポジウム・ワークショップ パネル（その他）) (2020)
  • 著者名/発表者名: 會澤 信弘, 飯島 尋子, 西口 修平
  • 学会等名: 第56回日本肝臓学会総会 2020.8 大阪
• [図書] 肝臓領域の超音波overview.これ一冊ですべてわかる消化器超音波検査.(35) (2020)
  • 著者名/発表者名: 飯島尋子 西村貴士
  • 総ページ数: 292
  • 出版者: 日本メディカルセンター