研究課題/領域番号 |
18K12122
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 尚人 沼津工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (50551066)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜電図 / マイクロペリメトリー / 視感度低下 / 網膜層の特定 |
研究実績の概要 |
網膜上の任意の検査点の視感度低下はマイクロペリメトリー(精密視野検査)を用いて検査できる。しかし、その原因となる網膜層を特定することは出来ていない。また、障害の原因となる網膜層の特定は現状の網膜電図(ERG)を用いると、パターン形状が固定式のため、網膜上の決められた検査点でしか計測が出来なかった。この問題点を解決するため、我々はパターン形状移動式のERGとマイクロペリメトリーを開発してきた。そして、移動式ERGにより錐体反応(a波,b波,c波,PhNR)及び杆体・錐体合同反応が観測され、網膜層特定を可能とした。しかし、移動式はパターン形状をそのまま平行移動させる方式のため、計測感度が検査点の位置によらず一定とするのに十分とはいえなかった。 次に、我々はその問題点を解決するため、検査点周辺領域と形状変形領域に分けて行うパターン形状可変式ERGの着想に至った。そして、移動式から形状可変式への変換を行っている。(1)マイクロペリメトリー及びパターン形状可変式ERG(試作)の実験系の構築、(2) パターン形状可変式ERG(試作)のプログラム作成及び人眼に対する網膜電位の計測を行った。形状可変式ERG(試作)により、移動式と同様に錐体反応(a波,b波,c波,PhNR)及び杆体・錐体合同反応が観測され、網膜層特定を可能とした。 また、平成31年4月~令和2年3月までの約1年間、高等専門学校機構の在外研究員制度を利用して、米国スタンフォード大学医科大学院眼科学教室(Dr. David Myung研究室)でパターン形状可変式ERGの開発と、開発に必須となる網膜及び角膜の細胞や生体組織の勉強を行う機会を得た。スタンフォード大学でパターン形状可変式ERGの開発を行う予定のため、研究計画の検討及び米国に輸送する実験装置の準備及び手配を行ってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は移動式で作製した実験装置を応用し、形状可変式への変換及び試作を行った。パターン形状可変式ERGは検査点周辺領域と形状変形領域に分けて行う。マイクロペリメトリー及びパターン形状可変式ERG(試作)の実験系の構築、 パターン形状可変式ERG(試作)のプログラム作成及び人眼に対する網膜電位の計測を行った。形状可変式ERG(試作)は錐体反応(a波,b波,c波,PhNR)及び杆体・錐体合同反応が観測され、網膜層特定を可能とし、予想した以上に高感度であった。ERG波形が高感度であった理由は電気計測装置を次のように向上させたことである。(1) ノッチフィルター回路の動作検証:主な周波数(45Hz, 47.6Hz, 45Hz)において出力電圧が大幅に減少したことを確認した。(2) 50Hzハムノイズ除去検証:測定用の皿電極及び耳クリップを接続させた状態で、I/Oデバイス及び端子台を用いて検証実験を行った。出力電圧の結果より、50Hzの周期的なノイズが除去され、ランダムなホワイトノイズのみが出力されていることを確認した。(3) ホワイトノイズ除去検証:シールドシートを用いて電子回路を包んだ状態にし、ホワイトノイズを減少させる検証実験を行い、ハムノイズが軽減された事を確認した。さらに,シールドシートとノッチフィルターを併用した際の出力電圧はハムノイズのような周期性のあるノイズが姿を消したことを確認した。最後に、ノッチフィルターとシールドシートの併用で80%以上のノイズを除去出来たことを確認した。今後測定する人体からのERG計測の実用化に十分満足できると考えられる。 また、研究代表者は平成31年4月~令和2年3月の期間、米国スタンフォード大学医科大学院眼科学教室に留学できる機会を得た。スタンフォード大学の眼科医と意見交換しながら、ERGの開発を行うことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は米国スタンフォード大学医科大学院眼科学教室のMyung先生の研究室で研究活動を行う。研究代表者のスタンフォード大学での身分は客員研究員(Visiting Scholar)である。Myung先生のご厚意で、スタンフォード・ゲノム・テクノロジー・センター内の1室をERG開発の研究室として提供して頂いた。この場所で、ノートパソコン2台、32インチディスプレイ1台、電気計測装置一式(マルチファンクションI/Oデバイス、増幅回路、ノッチフィルター、ERG電極等)、メンテナンス工具類等を日本から輸送して、ERG計測の実験を行う。まず、昨年度試作したパターン形状可変式ERGの改良を行っていく。Dr. David Myung研究室は毎週月曜日に研究発表会を行っており、研究員のプレゼンテーションを行い、活発な討論が展開されている。研究代表者も既に研究発表を行った。この研究室は眼科医だけでなく、化学工学、生物学等のエキスパートが揃っており、的確なアドバイスが期待できる。そして、スタンフォード大学の研究者と共に意見交換しながら、ERG開発を進めることが出来る。また、米国に輸送した実験機を用いて、パターン形状可変式ERG検証をスタンフォード大学病院の患者に対して行うことが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は令和元年度に高等専門学校機構の在外研究員制度を利用して、米国スタンフォード大学医科大学院に1年間留学することになった。スタンフォード大学眼科学教室のDr. David Myung研究室でパターン形状可変式ERGの開発と、開発に必須となる網膜及び角膜の細胞や生体組織の勉強を行う。パターン形状可変式ERGの開発を行う予定のため、研究計画の検討及びスタンフォード大学に輸送する実験装置の準備及び手配を行ってきた。 また、研究代表者は幸運にも、公益財団法人鈴木謙三記念医科学応用研究財団の平成30年度調査研究助成金に合格し、100万円を受領することになった。この助成金はパターン形状可変式ERGに関係するテーマであり、令和2年3月に報告書の提出が必要となる。そのため、スタンフォード大学に輸送する実験装置を鈴木謙三記念財団からの研究助成金を用いて購入することになった。
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